120大会出場辞退!?






















新学期が始まっても、降矢と冬馬が学校に出てくることは無かった。

不思議に思った冬馬の家族は警察に捜索願を出したが、いまだ連絡は無い。

降矢の方は一人暮らしなので、海外の親と連絡を取って捜索願を出した。

それよりも、重要なのは。




相川「…」

吉田「なんてこった…この時期に二人とも行方不明だなんて…」

六条「一体何があったんでしょうか…」


野球部一同が部室にて緊急会議を開いていた。


県「陸王学園が来た日までは確かにいたんですけど…」

西条「帰り道で行方不明か…」

緒方先生「情報では黒いコートの男が二人と話しているのを見た、っていうのはあるけど…今の所は全く居場所がわからないわ…」

野多摩「ゆ、誘拐かな〜?!」

御神楽「一週間近くも連絡が無いなど、まずおかしいではないか!」

原田「さ、殺人事件を目撃して…口封じに…」

御神楽「まさか…」

大場「うおおお!冬馬君に何かあったらおいどんは、本気出すとですよ!!」





吉田「落ち着けっ!!!」




吉田の一喝で辺りは静寂に包まれた。




吉田「帰ってくるに決まってる。降矢だぞ、ただじゃやられん奴だアイツは」

相川「そう信じるしかない…」







コンコン。

不意に、部室のドアが叩かれた。


御神楽「こんなときに…誰だ?」

六条「わ、私が出ます…」


ガチャリ。

六条は部室のドアを開けた、そこにいたのは…。



六条「え、えーと、どちらですか?」


小柄な少女と、黒いコートを着込んだ男。



???「降矢毅と冬馬優は俺達が預かっている」


黒いコートの男が、言った。


吉田「なっ!」

相川「なんだとっ!!」

???「心配しなくても、後ちょっとすれば返すからね、安心して」

三澤「…っ!!」

???「あら、こんにちわ三澤さん。大丈夫よ、もうあなたには干渉する気は無いの」

野多摩「二人は無事なの?」

???「ええ、なんとも無いわ」


とりあえず、部員達は安堵の息を漏らしたが…。



御神楽「僕達は明日大会なんだ、できれば二人をすぐ返して欲しい」

???「それはできない相談ね」

吉田「なんだと…?」

???「あの二人を今からここに連れてこようと思ったら、丸一日かかるもの」

相川「ふざけるなっ!!俺達はギリギリのメンバーなんだぞ!!二人抜ければ八人…試合が出来ない!!」

???「そう、ちょうどいいわ」

吉田「なにがちょうどだ…!!」


ガシイッ!!

いきなり殴りかかろうとした吉田を、相川と三澤が必死に止める。


三澤「わあっ!!駄目傑ちゃん!!」

相川「吉田、キレるのがちょっと速いぜ…ボコボコにするのは、降矢が帰ってきてからだ」

???「そうね、流石に私に手を出されたら、降矢君もただじゃすまないかも…」

吉田「ぐっ!」

緒方先生「け、警察を…っ」

???「鋼!!」


鋼は素早く落ちていたボールを投げ、緒方先生の右手に当てた。


緒方先生「きゃあっ!」

六条「せ、先生っ!!」

県「な、なんてことするんですか!」

鋼「…警察は止めておけ」

???「そうかっかしないで、迷惑をかけるつもりもないし、かけられたくもないの。…それに、九人揃えば、試合には出れるんでしょ」

相川「…?」





部室のドアを開けて、入ってきたのは『真田』だった。



相川「コイツ…」

大場「桐生院の制服とです!」

西条「どーいうことや姉ちゃん」

真田「俺が聞きたい、いきなりこんな所につれてきて…」















四路「真田君は、今日から将星高校野球部に配属してもらうわ」












『…!?』

いきなりのことに、皆が黙ってしまった。


真田「聞いていないぞ!!そんな事を」

四路「今更あなたが桐生院に帰っても、居場所はもう無いわよ」

鋼「8号…堂島はすでにお前を野球部から退部にしているはずだ」

真田「なんだと!?」

四路「…やりそうなことよ、そういう訳。大人しくやって頂戴」

相川「お前らだけの理由で勝手に決められると思うなよ…」

三澤「どこまで…どこまで邪魔するの!?」

四路「邪魔だなんて…代役を用意してあげたのに…」

鋼「そういうことだ、用件は済んだ。四路様、帰りましょう」

四路「そうね、それじゃ。機会があればまた、逢いましょ」


軽く、ウィンクを交わして部室を出て行く二人。


吉田「ま、待ちやがれっ!!」


吉田も勢いよく外に出るが…。



吉田「ぐ…いねぇ!」


すでに誰もそこにはいなかった。


吉田「…く、くそぉっ!!」

相川「吉田…」










吉田「降矢と冬馬は…帰ってくるんだろ!!なら、それまで俺達は勝ち続けるしかないっ!!あいつらと甲子園を目指すんだ!!」

相川「…!」

三澤「傑ちゃん!」


吉田「真田、とか言ったな」

真田「お前は…?」

吉田「俺は将星高校主将、吉田傑。…なんかどうもややこしいことになったが、俺達は負けられないんだ!俺達に協力してくれ!頼む!!」


吉田は、真田に頭を下げた。


相川「よ、吉田!」

吉田「夏は負けたけど…秋は、もしかしたら、もしかしたら、甲子園に出れるかもしれないんだ!!桐生院もバラバラだって聞いたし…チャンスはあるはずなんだ!!」

真田「アンタ…」

相川「訳わからない事件だらけで頭が痛いが…大会は明日だ、この際何も言ってられない。頼む、俺達と試合に出てくれないか」

真田「…」


皆が真田を見つめている。

真田も諦めた様にため息をついた。


真田「名門桐生院に入れた時は、まさかこうなるとは思ってもいなかったがな…」


真田は右手を前に出した。


真田「吉田とか言ったか…まあ、とりあえずよろしく頼むぜ。俺も野球は辞めたくないんだ」

吉田「…ほ、本当かっ!!?」

真田「…ああ」



二人は強く握手を交わした。








吉田「―――よーし、降矢と冬馬が帰ってくるまで!勝ち続けるぞ!!」

全員『おおおおおーーーーーっ!!!!』




















こうして、十一人目の選手を向かえ、将星は降矢と冬馬不在のまま秋の大会を迎えることとに…!












第弐部終幕!!







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