「きゃあっ!ふ、普通女の子は殴っちゃダメなんですよ!」
「しるか!トンカツだと!なめんな!」
なんかイライラしていた、それはおそらく近松と桜庭の間接キスを妄想していたら天罰が下されたからだ。
俺は何もしていないっつーのに、何故俺が痛い目にあわなきゃならん。
しかもこのクソアマ俺のことトンカツ呼ばわりしやがって…。
「しかも俺は蹴ってねぇよ!蹴るフリだばーか!」
「…う」
そう、別に実際蹴ってない、蹴るフリをしたら勝手に相手が吹っ飛んだのだ。
いくら脳細胞がダンボールでできてる俺でも女の子に暴力は振るわない。
何故って?俺がハリウッド・スターだからさ(意味不明)
「っていうーか!っていうかー、何してんのお前」
俺はぶっ倒れた男を一瞥してからさきっちの方を見て…もう一度男を一瞥した。
「おお!Nじゃねーか!?」
「…見たのね」
「何を!?」
さきっちは大いにずっこけた。
暗闇に照らし出されたさきっちはゴスロリ服を着ていた、どうでもいいけど。
…否どうでもよくねー!なんだその可愛い趣味は!うへへ!
「い、いや、その見てないんですか?」
「いや見たぞさきっちにそんな趣味があったなんてなグヘヘ!」
「しゅ、趣味?べ、別に趣味じゃないんですけど…」
「そんな可愛い顔していい趣味してるじゃねーか」
「わ、私痴女じゃありませんっ」
「…?そりゃそうだろ」
「へ?」
「ん?ま、待て、何か話が食い違ってるぞい」
いやちげーだろ俺。
ここはかっちょよく問い詰める所だろ。
「待て待て待てぃさきっちタンよぉ、俺のクラスメイトであって実は血のつながった兄弟なんてことは全然無い沼田を殺すなんて!ガッデム!」
「こ、殺してませんよっ!」
知ってる、息してるし。
「…ラチがあかないですね」
さきっちの口調がちょっと変わった。
「お、お前二重人格か!そんなさきっちに俺興奮」
「見られた以上、アナタにも忘れてもらいます」
取り出したるはレトロなヲーターガン、水入れてシュコシュコふってピューって飛び出す奴だ。
俺は大爆笑した、地に転がりブレイクダンスしながら大爆笑した。
「欲しい!それ欲しい!」
「あ、あなたキチガイですか!?それなら都合が良い、記憶ふきとんじゃえ〜〜!」
ビミョーン。
うわ、微妙な音。
迫力のあるのか無いのか微妙な音を出しながらゆっくりと蛍光グリーンの水が俺に飛んできたけど、途中で消えた。
「のわっち!なんじゃあ!?」
「…あ、あれ!?エネルギー切れ!?」
さきっちは慌てふためいてそのヲーターガンを色々と振ってる、振ってどうにかなるものじゃないくらいは俺でもわかるがふってる。
なんかかわいそうになってきた。
「た、隊長〜〜」
「ジャスタモーメント!」
「は、はいっ!?」
「テメー何者だ!警察を呼ばしてもらう」
「わきゃっ!け、警察はダメです!」
「沼田を殺しておきながら、フテー野郎だ!」
「こ、殺してませんってば!」
『コラッ!そこで何をしているっ!』
ビキャアっと、まるで泥棒が美術館に有名な絵を取りにきたのに、取る瞬間に警部に「はっはっはかかったなルパァーン」ってな感じでライトを照らされて感じに、ライトを照らされた。
「と、とっつぁんっ!?」
「はわわ、マズイです!逃げます!」
『こ、こら待て!!』
いきなりさきっちと俺の間に割ってはいるとっつあんは、青色の服の警官だった。
んー、警部なんて感じじゃなく本当に派出所に勤務してるようなショボイ人だ。
しょぼっ。
「くっ!逃がしたか…こちら安井、二丁目地区にて怪しい少女を発見!」
警官さんはトランシーバーを取り出してどこかへ連絡し出した。
「君!大丈夫だったかい!?」
「おう!そんなことよりもアイツを!」
俺は今更になって沼田がぶっ倒れてる事に焦り出した、どーもさっきまでは謎の美少女=さきっちという訳のわからない状況にテンションが高まりすぎて、沼田がぶっ倒れてる事がどうでもよかった。
ごめんN。
「ちょっ!き、君大丈夫かい!」
「病院呼ぼう病院…病院が呼べるかー!」
救急車だ、つっこみを入れれる辺りまだまだ俺も冷静らしい。
そのうちドップラー効果全開で救急サイレンカーが来ると、Nをのせてどこかへと消えていったそんな日曜日の夜の話。
正直、近松だの桜庭だの、ふっとんだ。
「…ふむふむ、なんだか良くわからないけど、君は関係ないみたいだね」
「最初からそう言ってるザマス!」
「ザマスって…口には気をつけなよ、僕だからいいけど、怖い警官さんもいるんだから」
若干引きながら警官さんは喋る。
あの後俺は予想通り派出所に連れて行かれて、事情聴取された。
別に取調室でカツ丼を出された訳ではなく、ちっこい派出所の椅子に座らされて一対一で色々質問されただけだった。
…僕ちんつまんなーい。
「じゃあ、気をつけて変えるんだよ」
「ジャスタモーメント警官さん」
ジャスタモーメント=ちょっと待った。ちなみに英語である。
「俺の質問にも答えてくれ」
「な、なんだい?」
「一体何があったんですか?また何か事件でも…」
「んー、それは教えられないなぁ、騒ぎになったら困るし」
「何言ってんすか、俺と安井さんの仲じゃないッスかぁ」
「今会ったばかりじゃないか…」
「例の意識不明事件に関係してるんですか?」
「……ほらほら、帰った帰った」
ちょっと無言になった後、出口に向けて背中を押される。
「ちょっと待て!俺はあのさきっちとは知り合いなんだぞ!話を聞かせろ!」
「し、知り合い!?本当かい!?そこを詳しく教えて…」
「じゃーこの事件のことを教えてくれるか?」
「う…」
「さぁどーなんだ、アンサープリーズ!」
その後指相撲ジャンケン、マジカルバナナ、三文字しりとりなど熱い勝負が俺と警官の間で行われ…なかった、いともあっさり警官さんは教えてくれた。
この人絶対昇進しねータイプだなぁ。
「頼むから誰にも言わないでくれよ」
「うん、俺インディアン、嘘つかない」
「心配だなぁ…」
ちなみに俺も男らしくしっかりとさきっちについての情報を教えてやった。
とはいっても名前くらいしか知らないのだが。
あの女…これでもかってぐらい怪しいからな、絶対に何か関係があるぜ。
派出所を出て五分くらい、自宅に向けて爆走してると。
「ウゥゥゥ〜〜」
「…パトカーの音…何かあったのか」
あのさきっちが消えた後だ、何があったかわからない。
俺はパトカーを追いかけて追いかけて追いかけてたどり着いた愛人の家。
いやいや、駅前の人だかり。
「うわ人多っ!」
ガヤガヤという声がうるさく聞こえるほどの見物人の多さ。
街灯の下にパトカーが二大、キヨスクのおばちゃんも心配そうに見守っている。
幸いキヨスクのおばちゃん(レミィさん)とは知り合いなので、話しかけてみた。
「何かあったんですか?電車事故とか?」
「違う違う、なんだかいきなり倒れて意識不明なんだってさぁ。この頃はその類の事件は大人しかったのに、また起こって…怖い怖い」
「…なんだって?」
俺はベッドの中で一人考えていた。
ちなみにラジオの今日の作業は終わっている。
ごろり、と寝返りをうつと頭が枕の上からずれた。
(…ってことは、あのラジオは事件とは関係無かってことか?)
ラジオを拾った日から、町の人が原因不明の意識不明に陥る事件は全くなくなっていた。
そのことから、あの謎のラジオが絶対に関係あるとふんでたんだがなぁ。
「…うむむ」
で、その代わりに出てきたミステリアスふざけんなピープルが…さきっち。
ゴスロリに綺麗な黒髪、怪しすぎるミステリーな奴の割には…抜けてるが。
吸血鬼とかあやつってそーだな、全くの偏見だが。
「…うむむ」
アイツと出会って沼田が倒れてて、その後に駅で人が意識不明で倒れてたっていう話。
この二つが無関係とは思えない、そして沼田の様態がどうなのかはわからないが、意識は無かった。
そしてさきっちが腕にブッ刺していたなんか怪しいもの、アレがなんか人に危害を加えるものだとしたら…。
「…うむむ」
おいおいおい、これは大変な事になってきたんじゃないの。
ってことは、さきっちがこの事件の犯人?理由は?
どうして俺の学校に来たんだ?どうしてあのラジオを探している?
考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだ。
「…そんなことより暑苦しくて寝られねーよ馬鹿野郎!!!!!」
妙に裏返った俺のミステリアスふざけんなボイスが近所迷惑を作り出した。
翌、月曜日。
「みーど、ふぁーど、れっしー、そらお!」
某教育番組テーマソングを熱唱しながら電車を出る、改札をくぐると外に外ハネがキュートな気の強そうな少女がいた。
っていうか近松門左衛門がいた。
「どーなつじまの」
「無視しないでよ」
見えなかったかのように通り過ぎようとしたら首ねっこをつかまれた。
「あれ?どーして、俺実は今日は遅刻ギリギリなんだ、朝早い近松様がこんな所にいるわけないでしょう。これは幻だ、テンコーイリュージョンだ、よって俺がつかまれているのは幻覚…なのに触れる!?あれ!?俺ドラッグ中毒」
殴られた。
「なに訳わかんないこと言ってるのよ…せっかく日曜日はまともな奴かなぁって思ったのに…」
「ふふ、軽い冗談だ、俺の冗談は水素よりも軽い…」
「はいはい、もう…学校行こうよ」
「ジャスタモーメント、ちょっと待て!」
「何よ、もう、遅刻ギリギリなんじゃないの」
「それだよWhy,どうしてお前がここにいるのだ」
俺がそうのたまふと、近松様は何故か目線をそらして顔を赤らめた。
本日のおかず決定。
「…い、一緒に学校行こうと思ったの…わ、悪いっ!?」
最後のほうは恥ずかしさに負けたらしくツバがぶっとぶくらい全力で叫びはった。
「…あ」
慌てて口を押さえるももう遅し、我ら二人は道行く人の好奇な目線の対象になる。
こんにゃろー、っていうか同じようなシチュエーション前にもあったけど、前より今回の方が破壊力高いぞ。
「二度目なのに何故恥ずかしい」
「べ、別に恥ずかしくなんかないもん」
こらこら、もん、とか言わない、君のイメージ丸つぶれだよ。
「…ほら、行こうよ。み、見せ付けないとダメなんだから、仕方ないから手を繋ぐんだからね!」
へーふーんそー、顔はそうは言ってませんぜおじょーさん。
でもややこしくなるのが嫌いな僕は、仕方なくか、びぇーんと泣きマネをして手を繋ぐ。
流石にガッコについてまでは恥ずかしすぎるのか玄関で靴を履きかえた瞬間に近松は顔を真っ赤にして走り去ってしまった。
相当恥ずかしかったんだなァ、と俺にんまり。
そして、「じゃあするなよ」あのクソ野郎、と笑顔で殺意を込めた。
「あ…」
と、後ろで小さな声。
振り向くと、目線のちょっと上に顔。
「ありゃ、桜庭」
「お、おはよ…」
なんだかぎこちない笑顔で返される。
「あ、そーそー俺お前のおかげで近松と仲直りできたんだわ」
「え……そうなんだ、良かったね」
一瞬言葉に詰まったが、すぐに笑顔で返される、癒されるわー。
「うんうん、これもお前のおかげだな、借りはいつか返すぜ」
「か、借りだなんて…いいですよぉ、別に気にしなくても」
「今度はこっちからキスしてやろーか?」
「ひっ!キ、キキキキスだなんて、ななななに言ってるんですかもー!」
バッチィン。
平手。
いったぁい、背中にもみじできたな、間違いなく。
「み、未来先に行きますからっ」
あ、走って行っちゃった。
あ、ふらふらしてる、こけるぞ。
「ふにゃっ!」
あ、こけた。
「…それにしても、あの二人が間接キスか…うへへ」
媒体は俺なのだが。
そのことは深く考えないようにしよう、うへへ。
教室に入ると、何故か俺に視線が集中する。
ニヤニヤ40%、軽蔑30%、怒り10%、その他10%。
なんなのだ一体。
鞄を地面に下ろし、机に座ると前にいる近松に話しかける。
「なぁ、何この俺を見る痛い視線」
「…アンタ何かしたの?」
「何かした覚えはないけど、された覚えはある」
「…はぅ」
トマト発見。
「ねぇねぇ、ちょっといいかな」
クラスメイトのたいして仲良くないけど、知ってる女子が話しかけてくる。
「はーい、呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん」
「…」
引かれた、ぐすん。
「馬鹿」
「あ、あはは。あのさ、君昨日あの例の事件の犯人に会ったって本当?」
「は?」
あ、読めてきたぞ。
「アレか?俺が事件に関わってるかとかいう噂が飛び交ってる系?」
「へぇ、勘いいんだぁ。うんうん、昨日夜沼田君が、誰かに襲われて病院送りにされたっていうのが、すごい今話題でさぁ」
「悪いけど、俺、俺の知り合いがやられてんのにそーやって楽しそうに話題にされんのは、嫌いなんだ」
「…へ?」
「ノーコメント」
そのまま一瞥すると、その女子は罰が悪そうに自分の席に戻っていった。
「…ふーん、アンタ結構いいところあんじゃん」
前の席の気の強そうな人が俺の顔を覗いて言った。
「惚れましたか?」
「…馬鹿」
最近馬鹿多いなぁ、飽きてきたぞそろそろ。
で、昼休み。
を迎えてるなんて知らなかった、なぜなら僕は夢の中だったから。
マリオがクッパとケンカしてるよ、ライムバトルで韻踏みあってるよ。
あ、マリオ勝った。
「「あの!」」
と、妙に被った声で目が覚めた。
「…?」
見ると、席の右に桜庭、前に近松。
「…?」
「へ?」
「あ」
近松と桜庭もお見合い。
「ち、近松さんから先にどうぞ!」
「え、う、ううん桜庭ちゃんからどうぞ」
「いえいえ」
「いやいや」
ふぁー、眠。
「…ZZZ」
「わぁっ!寝ちゃダメですよ!」
「何寝てるのよアンタは!」
「…何?ストリップショーが始まったの?」
バキィッ!!
「い、痛ぁっ!なんじゃ!クリス、お前いきなり何するんだ!」
「誰よっ!!」
「誰ですかぁ!?」
「え、いや、ストリップ劇場につとめてる愛人のクリス…」
はっ!いかんいかん…ついつい夢の中の出来事を現実に持ち込んでしまったぜ、まさしくデイドリーム。
…じゃなくて、お二人様、俺を見るその目は何?
「…さ、最低…」
「す、すとりっぷげきじょーなんていったらだめなんですよー!はぅぅ!」
「ち、違う!クリスと愛人なのは俺じゃなくてジョージ!」
「誰よ!」
「だ、だめなんですよー!」
だ、ダメだ自分で言ってて何だけど、通じるわけ無ぇー。
仕方ないじゃん夢なんだから!
「で!誰よ!誰よ!クリスって白状しなさいよ!」
「…夢の中の人です」
二人ともドン引きだった。
…いやいやいや白状したじゃん!!
「…ま、まぁいいわ、アンタ元々訳わからない奴だし、はぁ」
ため息。
「そうですね」
「もう、しょうがないんだから…」
「しょうがないなぁ、じゃあ俺は寝るお休み…ぜっとぜっとぜっと」
「待てーーーっ!」
「なんですか!俺は眠いのです、俺の眠りを妨げるものは何人だろうと許さないのです!」
「はぅぅ、ごめんなさい…」
「じゃなくて!お・ひ・る!」
「あひる?」
バキィンッ!
ホームラン。
「アンタ馬鹿?」
「馬鹿です…ごめんなさい、で昼ドキッ…もとい昼時がどうしたんだ」
「お昼、一緒に食べようって言ってんの」
赤らめた顔で、つきつけたのはピンク色の弁当。
「わ、私も一緒にお弁当食べようと思って」
「「へ!?」」
俺と近松が被った。
「…桜庭ちゃん?」
「み、未来、近松さんには負けませんっ」
ゴゴゴゴゴゴゴ。
あー、あれか。
「修羅場」か、これ。
死にたい(泣)