230女子ソフト部戦14快走












ダンッ!!

一塁ランナーの御神楽がホームへ向かうのを、西条は確かに見ていた。

確かな手ごたえ…いや、手ごたえなどほとんど無かった、それほどに真芯で捉えた感触。

打球の行方を確認するよりも先に、一塁ベースを回る。


―――同点!


チェンジアップなのが助かった、当たるかどうかは神頼みだったが…なんとまぁド直撃してくれた自分のバットに感謝する。

全力疾走で息を切らしながら二塁ベースへ向かう直前、何か白いものが西条の目に入った。


西条「バックホームや!!!」

『おおおおお!!!』

相川「…はっ!御神楽ぁっ!急げ!!球が帰ってきてる!!」

御神楽「なんだとっ!?」


三塁から本塁へと両足を飛ばす御神楽、一瞬首を回して振り向いた先に白球を確認。

そう、レフトの村上が素早いリカバーでホームへと右肩をぶん回していたのだ!!


村上「内野だけで盛り上がらないでよ…ねっ!」

蘇我「あやっちナイス!!」

御神楽「ちぃいいいっ!」


微妙なタイミングだ、間に合うかっ!?

歯を食いしばる、御神楽は息を止めて歩幅を大きく伸ばした。

右腕を大きく振り、少しでも加速をつける!!


柳牛「不破先輩っ!!」

海部「刺すんだ不破ぁっ!」


キャッチャーの不破は膝を軽く曲げて捕球体制に入る。

あくまでも冷静に、努めて冷静にタッチアウト……確信はある。


不破(間に合う)

御神楽(ぐっ!)


御神楽の左目に地面をバウンドするボールが見えた。

この速度だと間に合わない…おまけにストライク返球だ、キャッチャーの不破がホームベースからまたく動かない。


県「御神楽先輩っ!回り込むんですっ!!」

御神楽「!」


見れば…わずかに不破はホームベースの前に立っていた、微妙なタイミングと見て早めにボールを捕っておきたかったのである。

だが、それが隙となる。

さすがに女子相手に本塁激突を狙う訳にもいかない、御神楽はホームベースの裏側から回りこんでタッチ…逃げる体制に向かう。

が、流石に県の声で不破もそれに気づく。


不破(…交わしてくる)

御神楽「うおおおっ!!!」


バシィッ!!

疾走する御神楽、ホームベースの1M前まで来たところで…。

御神楽(…!)


不破「…殺す」



ギラリ、と鋭い視線を真正面に受ける。

不破はすでに御神楽の方を向いていた……!


野多摩「もう駄目かもぉ〜!」

県「くっ!」

不破「生還させない」


右側に回り込もうとする御神楽に合わせて、不破もホームベースを防ぐように飛び出す。

大きな大きな壁が御神楽の前に立ちふさがる形となるっ!!


雨宮「…駄目だ!!」

柏木「えっ!?」

雨宮「不破っ!戻れ!!左側が開いたっ!!」



―――ガッ!!


不破「!」


右側に回りこみかけていた御神楽、右足を大きく踏み込む。

地面に食い込んだスパイクは、ブレーキの役割と同時に御神楽の動きを大きく変えた。

御神楽に合わせて飛び込んできた不破の不意をつく動作…!!


県「あっ!!」

西条「よっしゃあ!」

相川「御神楽めっ!回り込む動作はフェイクだったのか!」


不破は勢いをつけてコースを防ぎに…飛び込みすぎた。

少しだけ開いた左側の隙間に、御神楽は全てを…かけた!!


御神楽「うおあああああ!!」

不破「くっ…!」


唸りを上げて御神楽が滑り込むっ!!!

ズシャアアアアアー!!!
















『アウトォーッ!!!』

審判の右腕が高く高く上に上がった、御神楽からなんともいえない呻きが上がる。

御神楽「く…!」

滑り込む直前、わずかだが左足に感触があった。

不破が大きく伸ばした手に当たってしまったのだ。

立ち上がっていた雨宮は、勢いよく座りこんだ。


雨宮「…なんとかなったか」


二点止まり…!

なんとかリードは保てた…、雨宮はへなへなと立ち上がっていた腰を下ろした。

三点差は今まで必勝の差ではあったのだ、なんせ柳牛の防御率は一点台だ。

そんな不動のエースは、アウトコールの後も堂々とこっちに帰ってくること無く、ふらふらと足元がおぼつかない。

まだ一点こちらが勝っているというのに…。

ライズが封じられ、頼みのコントロールも甘いところに入った球を痛打される始末だ。

まさかこんなどうでもいい試合であそこまで柳牛が追い詰められるとは思わなかった。

見た目こそ一点リードだが、ここまで本来の自分があらわになってしまっている柳牛相手だと…回が長引けば危険だ。



雨宮「……雪澤、準備をしておけ」

雪澤「およ?私ですか?」

雨宮「柳牛はもう限界だ、やむをえん」


へらへらした顔をさらに、にへらーとゆがめる雪澤。

急に投手指名されてもこの人の食ったような態度、どうもこの雪澤と言う生徒を雨宮はまだ理解しきれなかった。

同点にされたこの重いムードの中で、落ち込んだ柳牛の胸をこれでもか、ともみ続ける。

…え?


柳牛「ひーーー!!」

海部「こっ、こらっ!何してるんだお前!」

雪澤「落ち込んでる顔なんかミーには似合わないのですよ」

柳牛「…え?」

村上「…雪澤、お前」


にこり、と雪澤が珍しく邪気の無い笑みを浮かべた。


雨宮(…まぁ、お堅い海部がキャプテンのこのチームには必要な人材だがな)


雪澤「ミーはちょっと赤面しながら恥ずかしがってる顔が一番いいのだよぉおおおお、そーれもみもみー」

柳牛「んにゃああああ!!!」

村上「このセクハラ魔人があぁあああ!」

足利「あああ、柳牛さんの表情が…」

近松「どんどん駄目な顔に…」

蘇我「子供は見ちゃだめーだね」





五回裏、野球部3-4女子ソフト部。


重かったムードを雪澤のおかげで払拭した女子ソフト部とは違い、一点差に追い詰めたはいいものの同点に追いつくチャンスを逃した将星

は少し重苦しいムードが漂っていた。

なんとかして追いつきたかった…。

何故ならここまでなんとか投げていた三澤が、もうここにいないから。


相川「どうだ?」


相川は厳しい表情でちらり、と横を見やった。


西条「…正直、三澤先輩と比べると…経験者じゃない俺から見てもやっぱ劣りますかね」

冬馬「はっきり言うなぁ、もう」

西条「ほんまのことやないけ、誤魔化してどないすんねん」

冬馬「優しさが欲しいって言ってるの」

西条「口の減らん野郎やな、お前は!」

相川「とにかく……せっかく追いついたんだ、なんとかこのまま持つ!」


まだ一点差ある…これ以上リードを広げられる訳にはいかない。

どうにかこうにか、防いでいくしかないだろう。

相川は外野に歩いていく真田の背中を見ていた。

攻撃が終わった瞬間、すでにレフトに歩き始めていた真田は去り際に相川に一言残していった。

守るのはお前の仕事だ、と。



ナナコ「…!」

それまで六条の足の上でおとなしく座っていたナナコがいきなり、ぴくりと震えた。

六条「…ど、どうしたの?ナナコちゃん」

三澤と緒方先生が退場し、九人ぎりぎりで戦っている今、すでにベンチには六条とナナコしかいなかった。

後ろは二点に取り返した、とお祭り騒ぎの野球部応援陣が大いに盛り上がってはいたが、相川や西条の表情を見てると、六条もそう浮かれ

るような気分にはなれなかった。

それはそうと、先ほどからなにやら様子のおかしいナナコ、ついにそわそわしだした。


六条「ほらぁ、あれだけジュース飲んだらトイレ行きたくなるに決まってるよぉ」

ナナコ「んーん」


違うの、と首を振る。

飲みかけだったジュースを隣のベンチに置くと、六条の足から離れて地面に立った。

ずっとなにやら遠くの方を見つめている、当然六条にはそこに何か際立ったものは見えなかった。

一体なんだというのだろう。

しかし、ナナコは不思議な子供だ、何か嗅ぎ取ったのかもしれない。


ナナコ「りさ、私行かなくちゃ」

六条「へ?」

ナナコ「えーちゃんが来てる」

六条「――――え?ふ、降矢さんが?!」


ナナコはそれきり、グラウンドに背を向けギャラリーをかき分けるようにして外に走っていった。

ちょっと!と慌てて六条もついていく!





一方、バッテリー。

相川は頭を抱えざるをえなかった、なんせ足りなさ過ぎる。

決して冬馬のせいではないが、三澤に比べればストレートも遅いし変化球も無いし、これであのバッター陣を抑えろ、というのが無理な話

だ。

まだ一点ある…繰り返すようだがこれ以上点差を広げられるのはマズイ。


相川(…雪澤、村上、近松。六回に不破、柳牛、蘇我…七回に足利、関都、海部か…)


このままパーフェクトでいっても、どうしても最終回にあの怪物とまた当たってしまう。

…相川は地面の土を思い切り蹴飛ばした。



冬馬「す、すいません相川先輩」


苦い顔のまま熟考している相川を見かねて冬馬は思わず頭を下げる。

決して冬馬が悪いわけではないのだが、反撃し始めたこのタイミングで駄目押し追加点、となると…。


西条「何謝っとんねん、お前はお前で全力で投げたらいいんや!!」


サードには吉田に変わり、西条がそのままついていた。

多少頼りないが、打球反応が鈍いわけではないのでそのままサードの守備につくこととなった。


冬馬「他人事だからってよく言うよ…」

西条「聞こえてるっちゅーねん!」

原田「ねぇ師匠」

御神楽「なんだ」

原田「……なんか仲直りしてませんッスか?」

御神楽「いいことじゃないか?それがどうしたんだ?」

大場「何か匂うとです」

原田「…同じく、女の子の反応見てくださいよ?」


言い争いを続ける投手とサードに対してなにやらざわめき立つ、超、超一部の女性ギャラリー。


御神楽「???」

原田「冬馬君はますます危ういキャラになっていってるッスよねぇ」


『五番、ファースト、雪澤』


閑話休題。

打席には、クリーンナップであり先ほども痛いヒットを浴びせられた雪澤が立つ。

いや…ここまでの二打席、雪澤は実に全打席ヒットを放っている。


雪澤「相川くぅん、苦労してそうだねぇ」

相川「…まぁな」

雪澤「怖いにゃあ、睨まないでヨ。別にそんなおちょくってる訳じゃないんだから、さ!」


なんだか赤城と同じにおいがする。

相川はうんざりしながら、なんとかならないものか、と再び思考をめぐらした。







如月「せっかく二点取り返したのに、なんで相川先輩あんなに悩んでるんだろ…」

森田「そりゃそうだろう、あのマネージャーがいない限り、窮地ってのは変わらないんだ」

如月「え?冬馬の奴じゃ、駄目ってこと?」

赤城「駄目、ってことはないが厳しいやろうな」


赤城はあごの下を二、三回親指でなぞる。


赤城「いくらIQ200の大天才でも、銃相手に生身じゃあ辛い」

山田「そんな…それじゃ野球部負けちゃうってこと!?」

赤城「ん?なんや、急にムキになったなアンタ」

山田「あ、いや、その……」


ちらり、と生徒会の面々の側にぎゅっとこぶしを握って座っている夙川を見た。

野球部をはめるんですか、と聞かれたことを思い出した。

新聞部部長とはいえ、まじめに調査したことなんかあまりなかった、面白そうな話題に飛びついて面白い部分だけを抜き出すのに夢中だっ

たから。

野球部も部員が個性的で、試合が面白いと聞いていただけ。

ふざけてる時もあるけど、こんなに真剣だとは思ってなかった。


――――――吉田の三年間に俺の三年間をかけると決めた!!!!


冗談であんなこと言えるだろうか。

そしてあのホームベースの前でじっと悩んでいる相川の姿はとてもそんな冗談を言う男には見えなかった。

このまま野球部が負けてしまえば……。

夙川の言うとおりに教頭の悪い噂はたくさん聞いていた、しかし泳がせておけば新聞部の部費アップに使えるだろう、と軽く考えていたの

だ。

それに、夙川にあんな過去があっただなんて聴いたことも無かった。


山田「もったいないよね、こんなところで終わらせちゃうと」

赤城「あん?」

山田「…あのさ!赤城くん、この後試合どうなると思う?」

赤城「せやな、銃相手に生身の人間がどうやって勝つかってのが答えや。……ただ、生身の方の頭の回転率は尋常やないで?」


赤城はニヤリ、っと笑った。

この男はこの男なりに相川を買っているのだ。


山田「私、野球部の試合も女子ソフトの試合も、もっと見たい。棗に会ってくる!」


山田はガタリっと席を立ち上がって、飛び出していった。

如月も森田もぽかーんとしていたが、赤城だけがくっくっく、と笑っていた。


赤城「ま、それはさておき………お手並み拝見やで?相川君。…将星が負けてるってことは、いまだかわらんのやから。」


キャッチャーの真髄とは、投手の実力を引き出すことにある。

球を受けるだけなら壁でも立てておけばいい。

時には、ゼロを一にしなければならない縁の下の力持ちなのだ。

とにかくランナーがいないのだ、何球か試してみるしかない。



雪澤「ほーれほれ、来なさい冬馬きゅん、私もファンクラブに入ってるのよん。手加減はしないけど」

冬馬「う…」


行くか。

覚悟を決めてサインを出す。

ストレートとスローボールしかないのだ、なんとか進みながらやっていくしかないっ。


冬馬「ええいっ!」

ウィンドミルでもなんでもない普通の下投げ…からこれまた普通のボール。


雪澤「そりゃ、そうだろうねぇ…やっぱさっきのピッチャーはそれなりだったのよ」

相川「…!」

雪澤「本当は最初から、こうなる予定だったのよ、ウチとしてはさっ!!」


残像を残して、バットが軌道を描く。




キィンッ!!!


原田「ぐっ!」

大場「すまんとですっ!!!」


一、二塁間を抜ける鋭い当たり。

初球からの強打、相手にもされていないと言わんばかりのバッティング。

相川の顔から色がどんどんとなくなっていく…。

話にならない。

雨宮は親指を下に向け、冷酷に言い放った。


雨宮「終わりだ、潰すぞ」


『六番、レフト、村上さん』


村上「ごめんね相川君…でも、負けたくないの、わかってよね」

相川「…」


もはや台詞を聞いてる余裕などなかった。

普段はクールであるはずの相川がもうひとつこの試合で冷静になりきれなかったのは、もうひとつソフトのルールという訳があった。

なんせボールが大きい、というだけで捕球が難しい。

三澤がそれなりにコントロールがよかった分、ワイルドピッチなどはなかったが、何度球をそらしそうになって肝を冷やしたことか。

それにこんなにも圧倒的な不利で戦う試合が少なかったのもある、多少の不利なら吹き飛ばすという気持ちはあるが、何せ心の休まる瞬間

が無い。

さしもの相川が苛立つのも仕方が無いといえば、仕方が無い。



キィンッ!!!



冬馬「ううっ!!」

相川(くっ!!)

打球はライト前…これであっという間に一、二塁。

またもや初球打ちだった、しかも初球ははずすというボールに要求した球がストライクゾーンに入るというどうしようもなさだ。

まさに、手も足も出ない。

冬馬は、このままただのバッティングピッチャーとならなければならないのか…!

なんとかしなければならない、だがなんともならない。



相川(…)


『七番、サード、近松さん』


近松「悪いとは思うけど、これで勝負ありっぽいね、野球部さん」


いや、完全なんてこの世にあるはずはないのだ。

なんとか抑えられないか…神に頼むしかないのか…。


西条「何やっとるんや冬馬!!変にコントロールつけて投げようとするからあかんねん!」

冬馬「なっ…じゃあ、お前がやってみろよ!!」

西条「あほか!!俺がやったところで話にならへんわ!!さっきのお前のピッチング思い出さんかいっ!」


さっきのピッチング。

そう、西条とピッチングをやっていた時……こうなることはとっくにわかっていた。

だからこそなんとかしようとしたじゃないか。

頭の中から完全に落ちていた…が、西条のおかげで思い出した。


冬馬「…相川先輩!」


相川をマウンドに呼び戻し、バッテリー間で二言三言言葉を交わす。

相川「……できるのか?」

冬馬「わかりません…が、このままだとどうしようもない…です」

相川「…だな」


やるしかない、冬馬は相川を見上げ、相川は頷いた。



『プレイ!!』


雨宮(何を相談していたのかは知らんが…これで終わりだよ、野球部)


冬馬はいったんグラブを胸元に置き、大きく息を吐いた。

そのまま右手を後ろに引く…コントロールをつけるのも一苦労だというのに、試してみろ、とは西条の奴もよく言ったものだ。

胸中で愚痴りながらも、やるしかない、と右腕を振るう。




『ざわっ!!』

近松「きゃっ!!」

バシィッ!!


ボールは近松の顔面近く…近松は勢いよく飛びずさって事なきを得たが、そのままなら危ういコースだった。

冬馬「す、すいません!」

相川「すまない、大丈夫か?」

冬馬が慌てて帽子をとって頭を下げる、続いて相川も近松に近寄って手を差し伸べる。

地面に強く打ちつけた腰をさすりながら近松はその手をとり立ち上がった。


近松「う、うん…びっくりした」



雨宮の眉がぴくり、と動く。


雨宮「…?」

海部「監督…」

雨宮「お前も気づいたか海部」

海部「…気のせいでしょうか?なんとなく、一球目、二球目に比べて…ボールの質が違ったような…」



その後も冬馬はボールを続け、カウント0-3。

パスッ。

『ストライク、ワンッ!!』


近松(…?あれ…?今ちょっと…?)


何かが、違う。

先ほどまでただの棒球だったのに、今の球は微妙に何かが違った。


相川(……理論は同じ、か……冬馬のおかげで、1%増えたか…な)

冬馬(…なんとかいくしかない、失点は抑えないと!)


冬馬…第五球…!!


冬馬「いっけええええっ!!!」


ボールはまっすぐ…やや外角にそれていくものの、まっすぐにキャッチャーへと向かっていく。

近松もそのボールに軽く合わせ…!!


近松(もらったかも!長打で、2ベース!!)



―――ギィンッ!!


近松「あ…れ?」


近松のゆがんだ顔を尻目にボールは勢いが良いが、サード真正面!!

冬馬「西条!!なんとかしろよぉっ!!」

西条「俺を誰やと思ぉてんねん、名フィールディングみせたるわい!」


まずは、三塁を踏む、これでフォースアウト。

一つ。


西条「原田ぁっ!!」

原田「承知ッス!」


そのまま世にも珍しい左手のサードはセカンドへ送球!


バシィンッ!!

『アウトォッ!!』


冬馬「よしっ!これでツーアウトっ!!」

西条「まだや!!一塁いけえっ!」

原田「ほいさぁっ!」


スライディングしてくるランナーをジャンプでかわしながら原田は一塁へ送球。

ボールは近松が一塁ベースを踏む前にグラブへと収まった。


村上「え…」

近松「うそぉっ!?」



三重殺!!!

『オオオオオオ!!!』

あっという間にピンチは終焉を迎えた、冬馬は思わずグラブを手で叩いた!


冬馬「よぉおおおしっ!!」

西条「見たかい、あっという間にチェンジや」


その冬馬に向かって、西条は親指を立てて笑って見せた。




雨宮「一体、どうした近松」

近松「す、すいません監督!ですが…」

蘇我「ですが?」

村上「なんか…ちょっと、変だったよな?こう…今までと違うっていうか」

海部(…やはりな)

足利「…わずかに、変化してました?」

近松「そ、そうそう!それそれ、打つ瞬間にちょっと…」

蘇我「ちょっと?」

近松「なんか……浮いてる、みたいな」






六回表、野球部3-4女子ソフト部。

野球部の攻撃、残り6アウト。


『四番、ファースト、大場君』





六条「ナナコちゃん!!もうどこに行ったのーー!?」

グラウンドを抜け出して、どこへでもなく走り出すナナコは何故か校門の方へと向かっていったのだが…見失ってしまった。

一体どこへいってしまったのやら…ベンチに誰かがいた方がいいとは思うのだが…。

ナナコの名前を呼びながらふらふらと歩き回る六条。


六条(もう…)


そんな風にきょろきょろと周りを見渡しながら歩いているから、曲がり角の向こうの人影に気づくわけも無く…。

ドンッ!!

誰かにぶつかってしまった。

六条「きゃっ!…す、すいません…………え?」







top next

inserted by FC2 system