227女子ソフト部戦11意地
海部「……諦めろ、相川」
相川「…何ぃ?」
海部が申し入れてきたのは、戦闘中止の申し入れ。
多少申し訳ない顔もしながら、相川の顔を見ていた、そこに先ほどの顔は無い。
相川「何で今更そんなこと…!」
海部「もうよそう、こんな試合」
相川「…なんだと…こんな試合だと…?」
原田「ちょ、ちょっと相川先輩!?」
大場「お、落ち着くとです!今日の相川どんはおかしいとです!」
真田「…」
相川「ふざけるなよ!!今見ただろうが三澤のプレーを!!これだけ意地になって勝とうとしてる奴を放っておいて試合中止!?なめるなよ!」
海部「だが……」
海部はちらり、と面子を見渡す。
海部「おそらく、あの三澤さん…がお前らの唯一のピッチャーだったんだろう?…となれば、それがいなくなった今…まともな試合には…」
痛いところをつく。
その通りだった。
真田「その通りだな」
ぽん、と相川の肩を真田がたたく。
真田「落ち着けよ、らしくない。…それに…どうも単純な話じゃなさそうだぜ」
相川「…え?」
気づいたときには、氷上と桜井…そして夙川がそこに立っていた。
相川「なんでお前らが…」
桜井「あ、相川君聞いてほしいの…この試合…どっちが勝っても…良くないことばかりで…」
相川「は?」
夙川「…試合が始まってしまったのは不幸。でもその結果についてはいろいろと画策されている」
いまいち事態が飲み込めない。
氷上「その…なんですの。中止と言うと語弊が出るかもしれませんが…この試合、女子ソフト部の価値ということで手を打ちませんこと?」
西条「は…?」
相川「はは……何言ってんだお前…笑わせんな」
海部「私たちもムキになりすぎた…お前たちが予想以上に強かったから、本気を出さざるを得なかった。その結果が…怪我人を出してしまった」
相川「…怪我人は…しかたないだろ、スポーツやってるんだから」
夙川「聞いて」
すっと、小柄な少女が一歩前へ出た。
夙川「聞けば、この試合はもともと野球部の廃部をかけたものだったという、だが氷上会長の意向により…例えば野球部が負けてもあなたが生徒会に入るだけで済むという」
相川「…」
桜井「ご、ごめんね相川君…でも」
夙川「マズイのは決着がはっきりとついてしまうこと、そうなれば教師側に理由を与えてしまう」
緒方「きょ、教師側…?」
西条「なんやまだ俺らのこと嫌ってんのかあいつらは」
夙川「野球部が負ければ…西条友明、降矢毅、吉田傑、この三名を盾におそらく無理やり野球部を廃部に持ち込もうとする。結局…氷上会長が理事長との立場というのを利用して、無理やり判をおさっせる気、そうなればもう事態は覆らない」
西条「な、なんやねんそれ?!」
冬馬「無茶苦茶じゃないか!」
緒方「そ、そんな話が…」
大場「ど、どうしてそんなに詳しいとですか?」
夙川「私が…そうだったから」
ふらっと目線を足元に向ける。
夙川「私が所属していた天文部は、人数も揃っていたのに無理やり廃部に追い込まれた」
緒方「…え?無理やり?あれは、天文部が自主的に…」
夙川「本当はその日のうちに部室を他の部の物にされ、部の消滅をという事実を知らされただけ。………私たちはどうすることもできなかった、特に先輩は大学の進学もかかっていたから…」
緒方「…え?」
夙川「詳しいことはわからない、けど、逆らっちゃいけない。そう言われた。私は一年だったから良くわからない、けど、そのままじゃいけない。だから私は新聞部に入った。無駄な部なんて、ひとつも無い、誰もが頑張って何かを成し遂げようとしている。」
視線をあげ、相川を見やる。
小柄で細い外見には似合わない、凛とした表情だった。
夙川「実際、この学校の実権を握ってるのは奴。だから何とかしたい…でも、その前にそんなことが起こる前に、部を無駄に潰したくない」
相川「俺たちが…なんで潰されなけりゃ」
夙川「簡単なこと、あの男の我侭」
相川「…?」
夙川「最近ソフト部は全国レベルでこそあるが、なかなか優勝できない。ところが、野球部は創部二年にして地区大会二位の活躍、当然話題はそっちになる。それがあの男にとっては許せないらしい。事実、女子ソフト部が全国三位を決めたその日、私たち天文部は流星群を観測し、市の新聞にも取り上げられた」
大場「そういえば…そんなこともあったとですなぁ」
桜井「そ、それで辞めさせられたんですか?」
夙川「それで過去を調べれば出るわ出るわ。…昔はもっとたくさんの部があったのに」
県「そういえば…言われてみれば、この学校は校内生徒に対して部員の数が少ないですね…」
夙川「そして、ここからが本題、聞いて。おそらく、あらゆる手を使って野球部は危機に晒される。そうなる前に…なんとか事態を悪化させない方がいい」
相川「それがなんで俺たちが負けることに繋がるんだっ!」
夙川「決着が着くことが、まずい。ソフト部がこのまま勝てばあなた達はその敗北を理由に責めたてられる。所詮弱い部など必要ない、と」
原田「無茶苦茶だ…」
夙川「そして、野球部が、もし逆転しても……野球部ごときに負けるソフト部を許しておくはずがない。どっちにしても傷ついてしまう。なら、中止という形が望ましい。当然、引き分け、というよりも女子ソフト部の勝ちにしておいた方が立つ細波は少なくて住む。野球部が自分たちから負けを認めました、といえばあの男の自尊心に波は立たない、と思われる」
相川「…」
相川は黙ったまま地面をにらみつけた。
いまだ誰もマウンドの周りから動こうとはしない。
ギャラリーも何事か、と注意深くそのグラウンドの中心を見守っている。
夙川「…今なら、あなたが生徒会に入るだけで事態は重くならない」
桜井も野球部が敗北という事に関して少し心を痛めたが…相川が生徒会にいる、という小さな自分の我侭に従おうとしていた。
…一同が相川を見つめる、その視線は何を期待しているのか。
相川「…ごめんだ」
夙川「…え?」
相川「ごめんだ、と俺は言っているんだっ!!ふざけるな!!生徒会だと!!俺は…俺は―――」
相川「―――吉田の三年間に俺の三年間をかけると決めた!!!!余計なことをするつもりはないっ!!!」
―――シーン。
あの相川が、ここまで激昂するとは、グラウンドは静寂に包まれた。
心の底からの熱をぶつけられて、夙川棗は文字通り一歩引いた。
何?今の?
熱気が、気迫が人を動かす。
そう…ここまで相川が生徒会に入りたくなかった理由は別に、氷上が嫌いだから、だとかそんな理由ではないのだ。
吉田と野球をすると決めたから、助けると決めたから、その信念を曲げるつもりなどさらさらないっ!
真田「くく…くっくっく……………そうか、そういうことか…それでムキになってたのか、相川。……だが……悪くない。そういうの、嫌いじゃないぜ」
真田が声を押し殺しながら笑っていた。
真田「…気に入ったぜ相川、お前はやはりこっち側の人間だ。勝利に…野球に飢えてる、くっく…。気に入った……そうだな、力貸してやるよ」
相川「おいっ!吉田!いつまで腑抜けているんだ!いくぞっ!」
吉田「相川…お前…!」
相川「今更貴様がこの試合を受けなければ、なんて言うつもりは無い!勝つぞ!」
海部「ば、馬鹿な!!エースもいない、おまけに三点差開いてる、それでどうするつもり―――」
相川「俺たちは勝つ!!!!」
吉田「…!」
相川「この馬鹿の言葉を借りれば『難しいことなんか知らん』ってところだ、いいか海部俺は理論で野球をやるが……この世には0%なんて無いのさ…動く限りな!」
県「…そうですね!まだ諦めません!!」
海部「だ、だがピッチャーは…!」
西条「おい!行くで冬馬!!」
冬馬「え…?」
マウンドに座り込んでいた西条が突然立ち上がって、冬馬の手をとった。
西条「お前が投げるんや!!」
冬馬「で、でも…俺、三澤先輩ほどの球なんて…!」
西条「知るかそんなもん!!ただお前が一番マシなんや!来い俺が受けてやるから、肩作るで!」
ちょっと待ってくれよ、と冬馬は立ち止まる。
西条は、俺のことが嫌いなんじゃないか、と。
冬馬「お前、俺のこと嫌ってるんじゃないのか?」
西条「………こんの、アホがっ!!」
冬馬「痛ぁっ!何するんだよっ!!」
西条「そんな言うてる場合かっ!今はあの金髪の分も込めてや!男がうじうじ細かいこと気にすんなや!行くで!!」
冬馬「……うん!」
西条「おっしゃあ、皆まだまだこれからや、行くで!!」
大場「…お、おうとです!」
原田「そうッスね…了解ッス」
御神楽「誰に向かって口を聞いているのだお前は…三澤さんの分まで僕はやるぞっ!」
野多摩「おーー!」
散り散りばらばら将星の選手はマウンドから去っていく。
最初からこのグラウンドには…試合が始まった時点で、外が割り込んでは駄目だったのだ。
氷上「最初から…私たちのことなんて、頭に無かったんですのね、あの方は」
桜井「相川君…」
夙川「…どうして?なんで、このままじゃどっちかが破滅するのよ!」
真田「……勝負ってのはそういうもんだろ。どっちが勝てばどっちかが終わり…その方がわかりやすくていい…くく」
夙川「…馬鹿げてる」
真田「俺に言わせりゃお前のほうこそ馬鹿げてるぜ…善人面して皆の幸せ考える前に、なんでお前は天文部とやらが潰されたとき何も言わなかったんだ」
夙川「それは…先輩が…脅されてて…」
真田「違うな、お前は怖かったんだ。自分のせいで誰かが傷つくのがな」
夙川「…」
真田「ってことは誰かを傷つけてまで自分の欲しいものを守る…天文部にそんな思いなんてなかったんだお前は……なら忘れちまえよそんなこと」
夙川「勝手なこと言って…他人事だから言えるんだ!!!誰かを傷つけてまで自分の幸せなんて望まない!」
真田「そうかい……窮屈に生きてるな、アンタ」
話は勝負に戻る―――。
五回表、野球部1-4女子ソフト部。
残り三回…その中で逆転を目指さなければならない。
その為には、あの柳牛のライズボールを攻略しなければならないのは明らかだ。
将星は肩を作っている冬馬とその球を受ける西条を残して、打者陣は円状にしゃがみこんで集合した。
真田がまず最初に口を開く。
真田「相川…お前のその熱意にかけて、俺も本気を出すとしよう。下らん余興の割りには熱くなってきたじゃないか」
県「それより、ライズの攻略法って…」
真田「具体的には、無い」
原田「な、無いってそんなはっきり…」
真田「ライズなんて大げさに考えるから良くない。伸びるストレートと考えろ」
御神楽「し、しかし…あの球は」
大場「ぐぅんと直前で上に上がるとです!」
真田「考えろ、と言っただろ。別に事実と違ってもいい」
相川「それから…どうするんだ?」
真田「一番いいのは、叩きつけることだ。叩きつけるバッティング、基本に忠実な…だが、落ちる変化球が来れば話は別だ。チェンジアップもある」
そう、球種が増えればそれだけ狙いが絞りにくくなる…。
ライズが増えたこといによってチェンジアップの威力が二倍にも三倍にもなるのだ。
野多摩「それじゃ、打てないってこと?」
真田「ふん、何もライズにこだわる必要は無い…ライズは言わば武器だ。武器に素手で立ち向かっても殺されるのはこっちの方だ」
吉田「…」
県「なら、どうすれば……」
真田「武器は最後にとりあげればいい、それで戦意喪失だ。見たところあの投手、そんなタフな精神ではなさそうだしな……つまり、ライズ攻略よりも前に、それを突く!」
相川「精神を…」
大場「突くとですか?」
真田「…ふふ、最終的にはな。…まずは武器から無力化させてやろうじゃないか…なに、ライズなんて無理して打たなくてもいい。まずは、今あそこで球を放ってるチビと…おかっぱ、お前だ」
真田は親指で、うんうんうなっている県をさした。
県「ぼ…僕ですか?」
この回は七番の原田から。
…何を狙うでもなく、バットを短く持ってしぶとく粘る…が、結局内野ゴロに捕まりワンナウト。
海部「…意地を張るか…いや、相手としては見事だその心意気…!だが、その気ならこっちも容赦はしないっ!」
…グッ!!ザザッ!
『ざわ…!?』
来宮「み、三澤選手へのアクシデントから、試合再開して一死…またもや場内が沸きます!なんと海部選手と関都選手が内野後方に下がりました!!」
赤城「…連中、どうやら本気で潰す気やな」
山田「…つ、潰す気?」
森田「あれだけ守備範囲の広いセカンドとショートが後ろに下がるということは…まともな打球ではまず二遊間は抜けん…だが…」
如月「…え?なんかあるの?」
赤城「あれやったら、バントを処理できん……!ああ、なるほどな、そういうことか…!」
来宮「ど、どういうことなんですか?」
赤城「見てみ、三塁とファーストがわずかに前に出て投手よりにおるやろ、あれで前の当たりも処理しようって魂胆やろ」
森田「しかし…あんな極端な守備、よほど守備力に自信が無いと無理だぞ…!」
上から見れば、ファースト、セカンド、ショート、サードがちょうど四角形になる特殊シフト故、そのシフトは他校からスクエアシフトと呼ばれ恐れられている。
本来なら女子ソフト部はこのシフトが通常守備位置なのだが、今までは格下相手ということで手を抜いてきたのだ。
だが真剣勝負を望むのなら話は別。
関都(大真面目…大真面目に)
雪澤(叩き潰すって…)
近松(ことよね、これ…)
関都「さぁ来い野球部!!抜けるものなら、抜いてみろ!!」
―――鉄壁!!
八番の県にとって、その壁は高く険しく聳え立って見えた。
だが…。
ザシィッ!!!
力強く右足を踏み出す。
そう、もうくじけないと決めたのだ。
その一歩を踏み出す勇気を、自分から出さなければなんになるっ!!
県「なんとかしてみせます!…三澤先輩…そして相川先輩の為にもっ!!!」
『プレイッ!!』
真田の言葉は不確かな物ではあったが、確かに言われてみればそうともいえる事だった。
打順……!
今時珍しいといえばそうでもないかもしれないが、将星には右打者が多い。
というよりもほとんど右打者だ……八番県、九番冬馬を除いて…!
まずそこから突いてみる…相手が嫌がりそうなことならなんでもやってみる…!
もしかしたら左打者が苦手かもしれない、特に内角の球は県の体に当たる角度にならなくもない。
ソフトのフォームからしてみれば微妙かもしれないが、それでも精神的に相手を削る。
思えばまともに当たりすぎたのだ、真田にはそれが歯がゆかった。
勝つ…ためには、奇麗事だけでは勝てない、相手のあらゆる面を徹底的に突きまくる、弱点を探す、突破口を見つける。
しかし…!
バシィンッ!!
県「…!」
真田(ふん……内角も思い切って攻めてくる、か、そんな雰囲気には見えないがな)
確かに柳牛にとって内角を…打者側へ向かうボールを投げることはあまり好きではなかった。
だが、不安は自信によって包みこめる。
不破(攻撃方法を変えてきた…か。が、無駄。それぐらいで揺らがないコントロールをミーは持っている)
柳牛(…)
県「うう…!」
だが…まだ…まだだ!
ならば、自分の持てる全ての力を使ってなんとしても塁に出る…!
不破(空気が変わった…何か仕掛けてくる気か…!)
柳牛…第二球、ライズボール!!!
県「うおおおおお!!」
不破(来た)
柳牛「…っ!」
来宮「お、おおっと!?県選手バント!?」
赤城「セーフティや!」
バントなら当てられる…ボールを浮かさないように…転がせ…転がせッ!
海部「無駄だ!!近松!雪澤!殺せ!!」
近松「よっしゃ!」
雪澤「あいあいさー♪」
ボールが、徐々に上がっていく。
なんて落差…いやこの場合昇差とでも言うのか、ボールが昇り行く…天に!
ストライクコースからボールへと変わりゆくほどへの変化…だが、当てるっ!!
県「くぁっ!」
コキィンッ!!!
相川「あ…!」
蘇我「当たった!」
六条「やたっ!!!」
原田「県君っ!走るッスよぉおおお!!」
ボールは転がっていく…一塁側…上手い!
ちょうどキャッチャーとファーストの間に転がった球…だが、すでにファーストの雪澤はボールの側へ…!
赤城「あかん!処理が早い!」
雪澤「甘いよん、それでセーフになると思ったら大間違い……え?」
ザンッ!!
一歩。
ザンッ!!
二歩。
ザンッ!!
三歩。
ザンッ!!
四歩…!
県「うおああああああああ!!!」
駆ける!!
関都「玲ぃぃーっ!!!投げろぉっ!!コイツ速いぞっ!!!」
雪澤「う、嘘ぉっ!?」
四歩、わずか四歩で県は自らの最高速に立つ。
県は――――――あのミッキーとの邂逅から考え続けた。
速くなるにはどうすればいいか…最高速を上げるには人間の限界がある。
ならばやはり加速をあげるしかない…成川の甲賀…『疾風』の背中を追う!
森田「あれは……甲賀の疾風!」
赤城「言われてみれば…いや、でもちょいと違うで」
当然オリジナルより、威力は落ちる。
なんせ疾風は二歩目でほぼ最高速に乗る……そんな神業、短時間で習得できるわけが無い。
なら、自分なりに最高速に速く乗る方法を試してみるしかない。
県は何度も何度も、ショートダッシュを繰り返した。
たどり着いた答えは…一歩目!!!
一歩目でいかに加速をつけるかにある。
そこで、いかに地面を強く踏みしめるかにある。
わずかな一歩…それは人生で踏みしめる数においてはわずかな…ほんのわずかな一歩。
―――だが、野球人県自身にとっては大きな飛躍である。
県は、この加速のための一歩を『ジャイアントリープ』と名づけた。
県「つああっ!!」
ダンッ!!!
遥か後方に飛んでいったヘルメットを振り向くこともなく、力強くファーストベースを…踏む!!
『セーフ!!!』
『わああああああああっ!!!!』
相川「よしっ!!出たっ!!」
西条「なんやて!!…おおっしゃ!!県よくやった!!」
緒方「冬馬君、続くのよっ!!」
冬馬「は、はいっ!!」
ナナコ「……あ」
六条「どうしたの…?ナナコちゃん」
西条「なんや、またなんか気づいたんか?」
ナナコ「なんとなく」
西条「なんや、言うてみぃな」
ナナコ「…あの、あがるボール……下に落ちないね」
西条「…?当たり前やろ、ライズボールはあがるもんやぞ?…やっぱガキはガキか」
六条「もう!ひどいですよ西条君!!」
真田(…このガキ……ふん)
くっ…、ホームベース後ろの不破は軽く唇をかみしめた。
この試合初めての、軽い軽い動揺。
まさか……スクエアシフトを一発で抜かれるとは…!
真田「くく……まずは、一撃…!」
その後、県は勇気を持って盗塁。
あっという間に、一死、二塁…これを冬馬が送り、二死ながらも三塁というチャンスが訪れる。
願っても無い…差を詰める…チャンス!
山田「ねぇ…赤城君」
赤城「なんや改まって気色悪い」
山田「なんかさぁ……私思ってたのと違う」
赤城「何がや」
山田「……あんなに…真剣なんだ…なんか…鬼気迫るって言うか…」
赤城「当たり前やろ、わいらは野球やってんねんで?」
山田「…うん」
五回表、野球部1-4女子ソフト部。
二死、ランナー三塁、バッターは一番に戻って、ライト野多摩…!