WEB拍手のアレです。


その3.I stll wait for you

「…」
国道沿いの街灯の側で彼を待っている。
待っている、というのはあいまいな表現だ。
情けない話だが六道聖は一人が寂しくなってしまった、それだけの話。
「…はぁ」
今までは一人だろうがなんだろうが寂しくても耐えることができた。
それが今じゃこのざまだ。
望まれもしないのに、先輩がバイトを終わるのを一人で待ってる。
先輩は部活が終わったあとも、週に三日どこかでバイトしてるらしい。
橘みずきはその場所を知ってるらしいが、聖は知らなかった。
でも、聖が唯一しってることはある。
それはバイトが終わった後は、この道を通るということ。
「…」
はぁ、と手に白い息をふきかける。
しかし手袋の上からでは意味がないな、と思って少し苦笑した。
ストーカーか、私は。
自嘲気味の愚痴がこぼれた。
父親は檀家を回って今夜は帰ってこないらしい。
今までは一人だろうが、寂しかろうが耐えれたのだが。
先輩が一人は寂しいだろうと、一緒にご飯を食べてるうちに…。
「…雪」
見上げると、白い結晶が黒い空から落ちてきていた。
今夜は冷え込むらしいと思っていたが、まさか雪が降っているとは。
もうすぐクリスマスも近い、今年のクリスマスはホワイトクリスマスになるかもしれない。
そう考えてから、気づいた。
周りはカップルだらけだ。
仲がよさそうな男女が手を繋いですれ違っている。
気づいたら急に、寂しくなった。
いつ来るかもわからない上に、約束もしてない男性を一人で待ち続けているのだ。
「何をやっているんだ…」
何回も帰ろうと思った、が、どうしても、もしかしたら、と思ってしまう。
先輩の笑顔が頭の片隅を何度もかする。
あの笑顔を見るたびに私は満足してしまう。
寂しくなくなってしまう。
麻薬だ、と思った。
それでも、やはりこないかもしれない人を待ち続けるのは寂しい。
もしかしたら風邪引いてバイトを休んだのかもしれない。
それならば自分はなんて滑稽なんだ。
後五分待ってこなかったら帰ろう。
さっきから十度目の決意だった。







「…何してるの?聖ちゃん」





思わず抱きついてしまった。
目を白黒させている先輩の顔がたまらなくいとおしい。
何かしゃべろうと思ったけど、嗚咽が喉の奥からこみ上げて言葉にならない。
「え!?え!?ど、どうして?!どうしたの!?」
「うぐっ、ひっく…うえっ、うええええ、ぜんぱい…よがっだ…」
「な、なんで!?な、何かあったの??」

今日の夕飯は、おいしい肉じゃがを先輩のために作ってあげよう。


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