亮輔「俺の正体を見たのならお前もあいつみたいにしてやる。覚悟しろ。」


























絵瑠「…………………………。」


























水の世界



































第4話 絵瑠と水の力







































亮輔「最初に聞いておくが、なぜ俺を影から見ていたんだ。」

絵瑠「あなたが私の友達に似ていたから。」

亮輔「そうか……………。お前は俺の正体を知っているということか。

そして俺が姿を借りた奴の事も……………。」

絵瑠「姿を借りた?」

亮輔「そうだよ。本物は眠らせて隠している。」

絵瑠「本物はどこに?」

亮輔「聞く意味はないだろう。お前はここから二度と帰れないのだから。」

絵瑠「いやだ。わたしには帰らなければならない場所がある。

今の私は自分ひとりのために生きてるわけじゃない。」

亮輔「黙れ。お前は俺が偽者であることを知っている。そういう奴がいると困るんだ。」

絵瑠「……………あなたが逆に帰れなくなるかも。」

亮輔「ふん。お前に何ができる!?俺にかなうわけがないだろう!!」

絵瑠「やってみれば?」

亮輔「ふっ、いいだろう。」































亮輔「散れ!!」































さっきと同じように亮輔の体全体が花びらのごとく散る。

そしてその花びらは私の元に飛んでくる。 亮輔「こんな花びら、避けられないだろう!!

はっはっは!終わりだ!!」

絵瑠「えいっ!!」





















ザパーーーーン!!

亮輔「何い!?」





















私の足元から大量の水が吹き上がった。

私の体はその水で押し上げられた。






……………トン。

空中でバランスを取り、綺麗に着地。

亮輔の攻撃回避成功。
















亮輔「……………ふ、ふんっ!調子に乗るなよ。

俺が本気を出せばお前なんてすぐに倒せるんだ。

今手加減してやってただけでもありがたいと思え!」

絵瑠「殺そうとする相手に手加減なんてウソバレバレじゃん。

ただ単に私をなめてただけでしょ?」

亮輔「だっ…黙れ!!今度こそさよならだ!!」

そういうと亮輔は散って消えた。





















絵瑠「…………………………。」

相手が何をしようとしているのかは大体わかる。

たぶん隙を着いて出てくる。

そう思って首に下げていた青い石を外して手に持った。





















亮輔「後ろもらったぜ!!」

亮輔が後ろに現れた。


























絵瑠「砕水派!!」

私は石を亮輔に押し付けて叫んだ。

亮輔「ぐっ……………。ぐぐぐぅぅぅ……………。」

亮輔はその場に倒れこんだ。

私の勝ちだ。


























絵瑠「今のが水の力。これ以上暴れるともっと強いの出すよ。」

亮輔「ふん……………。俺が負けるなんて意外だったな。」

絵瑠「気になるんだけどさ、なぜあなたは他人の姿を借りる必要があったの?

そして人の姿を借りることができるあなたは一体何者なの?」

亮輔「ふん……………。仕方ないな……………。」

亮輔は体を起こした。































亮輔「俺は花の精霊だ。」

絵瑠「へぇ〜、花の精霊なんだ。じゃぁさっきの花びらみたいのは精霊の力かぁ。」

亮輔「あれは相手の体にまとわりついて締め上げるだけの単純なものだ。

そういうお前もずいぶんと強烈なのを喰らわせてくれたな。」

絵瑠「さっき使ったの力は“水の力”をうまく使える人だけのもの。

その分かなり強力。高いところから水面に落ちたぐらいの衝撃がくるよ。」

亮輔「……………ふっ。お前見かけによらず恐ろしい事するな。」

絵瑠「まぁね。でもどうして精霊が悪いことをするの?」






亮輔「もともと俺は花の姿をしていた。というか花に宿っていた。まだ咲く前の花に。

俺は花とともに能力が上がる。まだ能力は低かった。まだほかの花に移ることもできなかった。

だがその状態であいつに花を踏み潰された。あいつは踏んでもこちらに気づいていなかった。

明らかに悪意は感じられなかった。

だが俺は花の精霊としてこのまま終わってしまうのが悔しくて、

理不尽であるとわかっていながらあいつを閉じ込めて俺は姿を借りることにした。

こんなことをしても俺の能力は上がらないとわかっていた。

あの時、生への執着心が強かったせいでとんでもないことをしてしまった。今ではすまないと思っている。

だが今更入れ替わっても周りが迷惑するだろうから仕方なくそのままでいたのさ。」






絵瑠「人の姿を借りることができても花を移ることはできないんだ……………。」

亮輔「人の姿になれるのは花を守るためさ。

力の争いなんて何もないのがいいのだけど、やむを得ず力が必要になるときはある。」

絵瑠「ほかの人の姿にはなれないの?」

亮輔「俺には姿を自分に映す能力しかない。いずれにしろ誰かと同じ姿をしなければいけない。」

絵瑠「それで、これからいったいどうするの?」

亮輔「どうしようかな。花を失っているから精霊の姿に戻ることもできないしな。

あとは力尽きて消えるのを待つだけかな。でも自分が消えるのを待つのもつらいだろうな……………。」

絵瑠「私の力で今消すこともできるよ。消すというか土に返すだけなんだけど……………。」

亮輔「……………都合のいい能力だな。

でもそれが一番だろうな。花の精霊として土に返るなんていいよな。最高だ。」

絵瑠「ところで本物は?」

亮輔「お前と最初に木の下で会っただろ?あの気の裏に実は“うろ”があってそこで眠らせている。

うろは木の皮に見せかけたものを貼り付けて隠しているからほかの奴に見つかっていることは多分ないだろう。

俺が消えれば俺の力の効力も消えてあいつは目覚めるだろう。」

絵瑠「わかった。それじゃぁ今から消すけどいい?」

亮輔「まて、消える前に言っておきたいことがある。」

絵瑠「何?」

亮輔「俺みたいに―――――――――――。」































絵瑠「――――――――――わかった。ありがとう。」

亮輔「お前が礼を言う必要はないだろう。

俺はお前を殺そうとしたのにお前は俺を救ってくれたのだから。」

絵瑠「自分が正しいと思ったことを素直にやっただけだよ。」

亮輔「そうか……………。ありがとな。」

絵瑠「どういたしまして。それじゃぁいくよ!もう言うことはない?」

亮輔「もうないよ。さっき全部言った。」

絵瑠「わかった。それじゃぁ行くよ――――――――――!!」































こうして精霊は消えた。

私は彼のように罪をの意識を持ちながら生きることはとても悲しいなぁと思った。

それと同時に自分の知らないところにはまだまだいろいろなものがあるのだと強く感じた。
















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