【指定No.0113に関する報告書】No,56
報告責任者七角 春臣
        Nanakado Haruomi



・異脳種に関する項


異脳種:
 90年代半ばより突然に現れた、普通(あくまでも普通、という言葉は判断に苦しむ言葉なので一般に常識となっている事とする)とは異なる力(abillity)を持っている人間。大方は先天性のものだがごく希に後発性のものもいる。また「異能」ではなく「異脳」であるのは彼ら(またはそれら)が、特殊な力を持っているのではなく、本来人間が持っている脳の力の内、未だ使われていない部分を使っているため。要するに他の人間は使わない脳の部分を使っているということ。

異脳種指定:
 異脳種として認められたもの(大方は小学校に上がる前の幼児期に何らかの形で力の一端が認められる)を、保護、及び研究する目的で政府が指定すること。 番号はその順に付けられていく。(2005年3月31日現在No,0121まで)

異脳種の力(abillity):
 様々にあるが主に遠視(約10kmを越える距離にあるものを1m単位まで視ることが出来る種もいた)、遠触(自分の体が触れていないものに触れる力。研究で空気を小刻みに動かすことによってやっているようだと分かってきている)などが往々にして多い。
 今回の指定No.0113はどちらにも当てはまらず、研究者としては「未来予測」と呼んでいる。


・被研者指定No.0113に関する項


異脳種指定No.0113
 異脳種指定年月日。2000年10月31日。

戸籍登録:
 海咲 光(みさき ひかる)。1996年6月2日生。
 家族構成は両親に、弟と妹が一人ずつ。家族及び親戚には、例によって異脳種はいない。

能力:
 未来予測。
 少ない情報から、自分の感じた五感に関わる情報から限りない数の未来を予測し、その中で一つもしくは二つの未来を予測する。的中率は98.8%。予言、と言った方が聞き慣れているかも知れないがあくまでも予測。脳を巨大なスーパー・コンピューターとして使い、未来を予測し、その条件下から有り得ない未来を排除していき、最終的に残った一つが、彼にとって未来予測となる。それを無意識の内に(これを研究者用語でカオス領域意識と言う)行っているため、異脳種として指定されている。

補足:
 2才の時に事故に遭い視力を失う。それによって上記に挙げたように五感から感じる情報、全てを使うことは出来ない。視力を除いた聴力、味覚、嗅覚、触覚のみ。これによって大分力が弱まっている。
 この条件ゆえに、彼の力が使われるのはおよそ聴覚を使った実験に限られる。

過去の功績:
 ベートーベンの失われた楽譜を完全に再現した。ベートーベンの生家より見つかった、焼け残った楽譜。それは未発表の曲であったがかろうじて読めるのは最初の前奏及び飛び飛びの部分だけだった。そこから彼は未来予想を使い、完全に再現した。焼け残った部分からその正確性は実証され、彼の力を世間に認めさせる功績となった。

 以下機密事項につき一般者閲覧禁止。
 往々にして今までの実験過程について挙げられている。





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