「おかわり」

 俺は「ライス食べ放題」という触れ込みの定職屋にいた。

 これで十杯目。でもまだ足りない……腹が減った……!

「おかわり」

 俺は、定食屋「モア」のアルバイト。異常なやつを目の前にしている。

 ヤツは、ライスをお代わりすること十杯。まだ食おうとしている。急いで炊いているが……何なんだ、こいつ。

 確か入店したときはもっとやせてたよな……

「おかわり!」

 私は、いきつけの定食屋に立ち寄った、サラリーマン。今、私の目の前で、信じられない光景が繰り広げられている。男が、ライスを十杯以上もむさぼっているのだ。

 その腹は異常に膨れ上がり、目は血走ってさえいる。


――もっと……もっとだ……まだ足りない!


「おかわり!」

 オイ……嘘だろ? これでもう三十だ……おやっさんが買いにいかせたけど……ペースも上がってるし、皿ごと食うんじゃねえの?

「おかわり!」

 あ、ありえない。男の腹はテーブルを傾けるほどの大きさになっている。あれが破裂するのではないのかとさえ思うほどだ。

「オカワリ」


――は、腹が……割れる……


「オカワリ」


――マダ……食い足りない……


 やつの体は、風船のように丸くなっていた。

 マジで、ヤバイ! 俺は店の外に飛び出した。

「オカワリィィ、オカワリィィ!!」

 彼の体は膨れ上がり、顔は肥大して眼球は飛び出していた。服は破れ、布切れと化して床に散乱する。もう食べていないと言うのに、その体は大きくなり続ける。口からは米粒が小川の如くに流れ出していた。
そのとき、店員の一人が店の外に逃げ出す。

 呆けたようだったほかの客や店員も、われに返って席を飛び出す。

 私も立ち上がったが、好奇の心から比較的ゆっくりと後ずさりしていく。

「オカワリィィィィッッ!!!」

 内臓の渦巻きのような唸りと共に、男の面はひときわ膨れ上がる。

「うわぁっ!」

 私が驚きの声を上げると同時に、男の体は破裂した。

 四散した肉片と共に、米粒が洪水と化して私の足をすくい上げ、尻餅をつかせる。

 白い奔流がやんだとき、私はゆっくりと立ち上がり、米だまりになった男を見た。


「……ごちそうさま」


 何故か、その言葉が私の口から出た。

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