『そのカメラマンは、必ず人が死んだ所を取ったらしい。
というより、その男が行ったところでいつも人が死んだと言ったほうがよいのかもしれない。
飛び降り、首吊り、電車事故、殺人……どれもが酷い写真だった。が、週刊誌の紙面を潤す彼は、あっという間に「一流」となった。
しかし、そんな彼の最後は、あまりにも早かった。
酔った弾みの転落死である。
しかし、これに関して一つの謎があった。
死んだはずの彼のカメラのフィルムに、彼の死体の写真があったのである』
「ふう……」
渡部はため息をついて、肩を叩いた。
深夜だと言うのに、不思議と眠くない。ともあれ、原稿を仕上げるのには都合いい。
ワープロはそのままに、渡部はいったんトイレへ行った。
そして戻ってくると、キーボードの上に何かがおいてある。
「……写真?」
それは写真であった。
一人の男が頭から血を流して倒れている。
「これ……もしかして……」
その男は、あまりにも知っている男だった。
渡部孝也――自らの死体だ。
「何だよ……おい……」
つぶやいた、直後。