「はぁ……」
家に帰っても誰もいないんだろうな……
私は、ため息混じりにうつむいた。
父さんは会社役員、母さんは通訳。私は一人娘。
だから、当たり前だけどね。
でも……なんでだろ、慣れっこのはずなのに……さびしいな……
うつむいた目の端に、段ボール箱が見えた。中に……ちっちゃい犬がいた。自分しか入ってないのに、隅っこで縮こまってる。
それをみたとき、自然に私の目に涙が浮かんでいた。
すっとそばにしゃがんで、つぶやく。
「私達……一人同士だね……」
やさしくそのお腹を持って、抱いて上げると、子犬は何も抵抗しないで、大人しく私の胸に収まった。
「……もう、一人じゃないね」
立ち上がって、歩き出す私の胸には、確かなぬくもりがあった。