「カタパルト・オープン」

 10Mの巨体が、ランディングベイにセットされる。

 F−45「メテオ」。まさに彗星を思わせる先鋭的なラインを持ち、手にはイオン式ビームライフルMF-7を装備している。

「マーキュリー、いいぞ」

「了解。「スターチェイサー」エリオット・マーキュリー、出撃します」

 転瞬、ブースターが点火し、メテオは宇宙の深淵へと飛翔した。

−1−

「レーダーに敵確認。セクター1所属と思われます。」

 母艦、カレワラ級エクゼターからの通信が、サブディスプレイに映し出される。

「了解した」

 言うのと同時に、ロックオンを知らせるアラートランプが灯る。マーキュリーはレバーを引き、敵の方向へとブーストを掛けた。

 さながらほうき星の如く残光を曳いて闇を駆けるメテオは、敵機がビームのエネルギーを充填するよりはるか速く、視認可能な距離まで近づき、銃口を向ける。

 遠距離射撃用の敵機「スツーカ」は、突然のことにロングレンジライフルを向けるが、もちろんエネルギーは発射可能までに達していない。一条の光線が、スツーカ胸部――コクピットを貫く。

 音の伝わらない宇宙空間に、爆風のみが広がる。それを突き破ってメテオはもう一機のスツーカに接近、腰から熱式ブレードを引き抜くと片方のブースターを止め、回転運動によって胴を薙ぎ払う。

 メテオの離脱と同時に、スツーカは基部から爆散した。

「敵艦をサーチ! 少尉、位置送信しました、向かってください」

 エクゼターからの通信は、レーダー情報に赤い光点を生んだ。

 その光点は、「イェール級駆逐艦アドミラル・ウェーヴァ」のものであると、ウィンドウにインフォメーションが出る。

「この距離なら、「ヨウカハイネン」が使える。射出を求める」

 「ヨウカハイネン」。正式名称を6式携行粒子法と言うこれは、現在存在しているいかなる戦術脚用兵器より射程距離が長く、かつ威力が高い装備で、現在は試験配備としてエクゼターのみに配備されている。

 また、この兵器はロケット射出システムを搭載していて、遠くの味方機に送ることができるのである。

「了解しました。ヨウカハイネン、射出します」

 まもなく、レーダーに新しい光点が生まれる。

 ヨウカハイネンである。

「ドッキングシステム、同調開始」

 メインウインドウに照準が出る。「ヨウカハイネン」と書かれた四角を、その真中に来るように調整すると、マーキュリーは深く息を吐いた。そして、次の瞬間、鋭く息を吸い込み、レバーを数ミリ動かした。

 ヨウカハイネンの光点が、重なる。

 直後、衝撃と共に、メテオの背中にヨウカハイネンがドッキングした。
まもなく、展開が開始する。

 メテオの背面スラスターに、ヨウカハイネンの吸気口が接続され、ヨウカハイネン下部のレールガンがメテオの右側にせり出す。

 メテオはライフルを捨てると、手をドッキングベイに固定し、システム系統を結線した。

「接続完了。コールネーム変更、「コメットバスター」」

 マーキュリーは、新たに出現した照準を動かし、ズームした。

 高解像度の映像で、敵艦の姿を捉える。

「エネルギー充填完了、ヨウカハイネン、発射」

 マーキュリーは、トリガーを引き絞った。

 白緑色の光が、レールの中央に集積され、それが一定量を越えた瞬間、大熱量の奔流が一直線に発射される。

 一条の光の矢は、高速の速さで闇を駆け抜け、はるか奥の敵艦を貫いた。

 レーダーから、イェール級の反応が消滅する。

「対象、レーダーロスト。作戦成功」

 レールガンが、冷却ハッチを開いて煙を吐く。

 マーキュリーの声に、エクゼターのオペレーター、レティシアは、緊張を解いて、言った。

「了解しました。……早く帰ってきなさい」

「Wilco(了解)、紅茶でも淹れて待っててくれ」

「了解。砂糖はどうします?」

「二つ。レモンのスライスがあると嬉しい」

「分かりました。待ってます、オーバー」

 切れた無線に、マーキュリーは小声で、「オーバー」と言って、スロットルレバーを引いた。

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