二人は、「幸せ」という言葉を表したような表情のまま歩いていく。
俺は、それを微笑を崩さずに見送る。
二人が消えて後、俺はため息を吐いた。――全くもって不愉快だ。
何故こんな意味の無いことをしなければならない?
仲人を任せる、なんていった大原を心からうらむ。
くそっ、ムカつく。何だって俺には縁談一つ来ない?
顔は普通、学歴それなり、金もある! なのになぜ?
何で俺ができなくてさっきの男―ケンジのような奴が付き合える? くっそー!
何回呪い殺そうと思ったことか!
……あ、そうか。俺のこの性格が悪いのか……
そうとなれば、あれだ。イイヤツになろう。
たとえば……
などと考えていたら、ケンジを引っ張ってヨシコが戻ってくる。
「おう、二人とも、幸せにな!」
言った瞬間、ヨシコの拳が俺の顔にめり込む。
吹っ飛びながら、俺が最後に見たのは……ケンジの浮気写真を持つ、ヨシコの手……なんだよ、俺……悪くねえじゃん……