放課後の教室、嘉澄は朱音と二人きりでプリントを作っていたのだが―

「ス・キ」

「な、何? なに? いきなりどうしたの?」

顔を寄せる朱音に、嘉澄は目をぱちくりさせた。

「だから、スキなの、嘉澄」

「んっ!?」

朱音は突然、さらに机から身を乗り出して嘉澄の唇を奪った。

休み無く朱音は嘉澄の口腔を蹂躙する。

熱い唾液は、吐息ともに嘉澄を朦朧とさせる。

その口が離れたとき、嘉澄は頬を赤く染め、脱力した。

「あか……ね……」

「嘉澄、いい?」

その問いに、嘉澄は力なくうなずく。

朱音は机をどけ、嘉澄の肩に手を回して引き寄せる。

糸の切れた操り人形のように、嘉澄はくてっと朱音に体を預ける。

「もうすこし、こうしてていいかな……?」

「……うん」

「一緒に、いてもいいよね?」

「……うん」

「ありがと、嘉澄」

朱音は嘉澄をぎゅっと抱きしめた。嘉澄は、くん、と鼻をならす。

差し込む夕日も消え去った中、二人は重なった影のまま、静かに動き始めた。

inserted by FC2 system