「行くか」
 ストラップを肩にかけると、長年連れ添ってきたコイツの重みが肩にかかる。

 METAL-MASTER、そうヘッドに刻まれたこの黒いストラトは、俺の唯一の相棒。

 いままで多くのことがあった。

 多くの仲間は俺を離れ、会社の圧力で方向性を変えさせられそうになり、「ロック」というだけで多くの「社会団体」から攻撃を受け……上げればキリがない。

 確かに、もう正統の血を持ったロックは古いのかもしれない。

 でも、俺はこう信じている。信じてやっていけば、必ず好転するって。

 いつか、皆分かるはずだ。ロックの魂を、「本物」の音を。

 それはあと何年、いや何十年先か分からない。もしかしたら俺の死んじまった後かもしれない。

 でも、俺は続けていく。まだ俺を求めてくれる奴がいる限り。

 スポットライトに照らされて、俺は何千回も弾いたリフをはじき始める。 

―俺のやり方で―

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