聖タチバナ編〜え?これなんて恋愛シミュレーションゲーム?〜









誰も楽しみにしていない13決定版プレイ日記の始まり始まり〜
えー現在11時です、今日はいったい何時までかかるでしょうか。

今日もちょっと小説を織り交ぜならできればいいかな、と思います。

ゲームセンターTBOB、課長、O----N!!!!!!!!!!!


というわけで、やっと来ました性タチバナ、違う、聖タチバナ。
僕はもう、わっくわくのばっきばきであります、すごく固い、起きぬけですんで。

早速サクセスでタチバナを選択…あーっと、すでにおかしいです。上の帝王実業と比べるとその差はいかんともしがたいほどに明確です。

やったらキラキラしています、ぶっちゃけ
キモイですが。



しかし戸惑うことなく選択!!
名前 堀江
外野手
長嶋打法

よし!旅が始まるぜ!この物語はフィクションだぜ!
そしてあいかわらずオープニングの髪の違う奴らが気になるぜ!!

ふむふむ、聖タチバナには野球特待生でいったのね。
矢部にも出会い、GOING MYSELF


音楽はなんとなく、マーチっぽいな。
アストロノーカを思い出すぜ、しかしけだるいな、やる気がまったくおきないミュージックだ。

これは桐生院のテーマをリンキンパークの「BY MESELF」にするしかないな。




四月


堀江「…流石だな、聖タチバナ。綺麗にグラウンドが整備されている、中学とは大違いだ」
矢部「そりゃそうでやんす、私立のお金持ち高校でやんすよ」
監督「お、来たな新入部員。俺は大先生…じゃなくて、大仙清(だいせんきよし)野球部の顧問であり、数学教師でもある」
堀江「…どうも」
矢部「よろしくでやんす」


監督「よし、全員そろったな。左から番号!」
堀江「…1」
矢部「2でやんす!」
???「3!」
監督「よし、それでは今日の練習を始める」
堀江「…いや、待ってください」
監督「どうした?」
堀江「どう見ても、全員で三人しかいないんですが…」
監督「そうだ、三人で全員だ!」
堀江「…は?」
監督「最近学校がなぜか野球に力を入れなくなってな…皆他の部にいってしまったんだ」
???「まったく先生の野球の凄さがわからんバカチンばかりですね」
堀江「…というか、さっきから気になっていたんだが、キャラの濃い貴方は?」
太鼓「私は太鼓望(たいこもち…たいこのぞむ)君達の先輩であり、大仙先生を人生の師と仰ぐものです」
堀江「…先輩でしたか」
矢部「頭でかいでやんす」
監督「ま、部が潰れないように部員をお願いしていたんだが、二人も来るとはとんだ幸運だな」
太鼓「まったくです、これも先生の努力あってのこと!よっ!」
監督「三人に増えたし、少数精鋭の野球部のスタートだ!」
太鼓「少数精鋭!いい言葉です!流石先生!」
矢部「なんかオイラたちがスポーツ特待生で入れた意味がわかってきたでやんすね」
堀江「…ま、いいだろう。それよりも、この状況…頭が痛いな」



―――


堀江「さて、部活に行くか…」
『わあ!生徒会メンバーが廊下をお通りになるぞ〜』
『マジかよ!』
『ワアアアーーーー!』
堀江「…何の騒ぎだ?」
(ズンズン)
「生徒会メンバー四人揃い踏みよ」
「やっぱそろうと威圧感あるなぁ」
???「みんな、元気にしてるー?困ったことがあれば生徒会までいつでも相談にきてねー♪」
堀江「なんだあれは…趣味の悪い。まるで大名の行進だな…」
矢部「生徒会長の橘みずき(たちばなみずき)ちゃん率いる生徒会でやんす!なんと一年生のみで構成したみたいでやんす」
堀江「…一年生のみ…?馬鹿げた話だな」
矢部「しかも、この学校じゃ生徒会が全実権を握ってるでやんす、先生よりもえらいでやんす」

みずぎ「あれ?キミ達見たところ外部入学制ね」
(おまけ:この台詞から、聖タチバナは、小、中と付属があることが確認できる)
矢部「わあ、入ってきたでやんす」
堀江「…どうも」
矢部「オイラ達は野球の特待生で入ってきたでやんす!」
みずき「野球!?」
堀江(…む?)
みずき「いや、なんでもないよ。そうだ、いい機会だから生徒会のメンバーも紹介しよっかな」
堀江(ずいぶん強引な奴だな)

みずき「まずは会計の原啓太(はらけいた)君」
原「お金の相談やったら任せてや!!」
みずき「そして書記の宇津久志(うつひさし)君」
宇津「男に優しくする趣味はないが…困ったときは助けてあげなくもないよ」
みずき「最後は、副会長の大京均(だいきょうひとし)君」
大京「大京です。聖タチバナの秩序は私たち生徒会が守ります」

矢部「個性たっぷりのメンバーでやんす」

大京「みずきさん、会議が始まります」
みずき「あ、そう?んじゃま、困ったことがあったら、いつでも生徒会に言ってね」
堀江「…」
矢部「わかったでやんす」

(ズンズン)

堀江「生徒会が最高権力者ね、変わった学校だな」
矢部「なんだか、機嫌が悪かったでやんすね?」
堀江「悪いが、俺はあーいう女が嫌いなんだ」
矢部「どういう女でやんすか?」
堀江「…ま、お前にもそのうちわかるさ」


――――


堀江「ふむ…春眠暁を覚えず、か。ん?あれは隣のクラスの…」
???(しずしず)
堀江「あんたは…三条院麗菜(さんじょういんれいな)、だったか。早いな」
麗菜「おはようございますですわ。堀江君こそ、ずいぶん早いですのね」
堀江「アンタはクラス委員長だから、毎朝早くて大変だな」
麗菜「みなさんの少しでもお役に立てたらうれしいですわ」
堀江(おしとやかなわりに、しっかりしてるんだな)

こういう女は嫌いではない。

麗菜「それにしても、入学して一週間、早いものですわ。目をつむると校門の桜の花びらも、祝福しているようね…」
(チリンチリーン)
みずき「どいてどいてー!」
堀江「お、おい委員長!危ないぞ!」
麗菜「え?」
(どーん!)
みずき「ごめんごめーん!誰か知らないけど、校門の前でぼーっとしてたら危ないよー!」
堀江「うあ…マウンテンバイクが直撃だな…。ん?アンタは…」
みずき「あ、おっはよー堀江君」
(バッ!)
麗菜「ゴルァー!人をちゃりんこでひいたままで何が「おっはよー」よ!」
みずき「あれ?どっかで見た顔…」
麗菜「どっかじゃないわよ、橘みずき!ここであったが百年目、中学時代の数々の恨み今こそ!」
みずき「あちゃ…麗菜じゃん。あんたもウチの高校に入ってたのかぁ…」
麗菜「勝負よ勝負!今度こそあんたをギャフンって言わせてあげるわ!」
みずき「あいかわらず面倒だなぁ。つーか、麗菜って一回も私に勝ったことないじゃん」

(キーンコーンカーン…)

堀江「おい、お前ら。急がないと遅刻するぞ」
麗菜「ちょうどいい、橘みずき!校舎まで勝負よ!ゴー!」
(ダダダダ!)
みずき「あ!?フライング。相変わらず汚いな、麗菜!」
(チリンチリーン)
堀江「…」
麗菜(しまった!自転車とは卑怯ですわ!!)
堀江「なんだ、あの二人は」


―――

堀江「行くぞ」
矢部「オーライでやんす」
太鼓「声出していこー!」
矢部「いくでやんす」
堀江「ああ」
太鼓「バッチコーイ、バッチコーイ」
堀江「…」

堀江「監督」
監督「なんだ、もうバテたか?」
堀江「やはりこの人数では、野球は辛いかと…」
矢部「でやんす」
堀江「それに、このまま野球部が活躍できずに、廃部になりますよ」
監督「え?!」
矢部「廃部になったらもしかしたら顧問の管理責任も問われるかもでやんす」
監督「そうなの!?」
太鼓「何を言う、先生が少数精鋭でがんばると前に言ったではないですか!」
監督「よし、部員を集めよう。まあ、なんだ、ほら、野球部は九人いないとイカン」
太鼓「ほらみろ、先生も部員を集めようって…ええ?」
監督「いやーはじめから俺も思ってたんだよ、やっぱ必要だよな、部員」
堀江「やれやれ…」
太鼓「でもどうやって集めるんですか?簡単には集まらないですよ?」
矢部「そうでやんすねぇ…」
堀江「…生徒会長に頼むのは、どうだ?」
太鼓「なるほど、生徒会のご要望会議ならいけるかもしれませんよ」
堀江「…なんですかそれは?」
太鼓「生徒会が強力な決定権があるのは知っていますね」
堀江「まぁ…」
太鼓「その、生徒会が不定期開催だが各部からの要望を聞く会議があるんですよ」
堀江「はぁ」
太鼓「その会議で承認されれば急遽部員を集めたり、部の設備を強化することも可能です」
堀江「成る程ね…良くも悪くも、生徒会次第、か」
矢部「じゃあ早速でやんす」
太鼓「いや、まてまて。不定期だから開催告知がないと意見を聞いてもらえませんよ」

(ピンポンパンポン♪)

『今から、今期のご要望会議が開催されます』
太鼓「あ、なんと開催連絡ですよ」
堀江「都合がいいというか、なんというか…」
矢部「じゃ交渉に行くでやんす!」
堀江「あの女に会うのは気が進まないが…仕方ない」

―――

(ガチャ)
堀江「失礼します…なんだこの無駄に豪華なソファーや机は…」
「今サッカー部が交渉中なので、しばらく椅子でお待ちください。ところで…あなた初めてですか?」
堀江「…はい」
堀江(…病院か、ここは)
「お待ちの間、よかったらシステムのご説明をしましょうか?」
堀江「頼む」
「この会議は各部からのご要望を言って頂き、担当の者と会長のみずきさんの承認が出れば送球に要望の対応をさせていただきます」
堀江(案外、簡単なのか…?)
「しかし、みずきさんは天邪鬼です。他のメンバーも一癖も二癖もあるので、なかなか一筋縄では…」
堀江「まぁ、そうだろうな」
「でも、誠意と気合で交渉すればかならず気持ちは届くはずです」
(ガチャ)
「わーん、けち〜。もうこねーよ!」
『残念でした、またどーぞ』
「あ、却下されたみたいですね」
堀江「…やれやれ」
「さ、野球部の番ですよ」
堀江「気持ちを人にぶつけるのは得意じゃないんだが…仕方ない。この際だ」

――――

堀江「…よろしくお願いします」
『用件をどうぞ』
堀江「部員が必要なんですが…」
宇津「人事のことならオレだね。部員が必要なのかい?そうだねぇ…、ふむ
…ボクは反対だな」
堀江(宇津の評価はイマイチみたいだな…これは厄介だな…)
宇津「一応みずきさんはどうだい?」
みずき「ん?」
堀江(あいつの機嫌は普通ぐらいか)
みずき「ふーん、部員ねぇ…、どーしよかなぁ」

堀江(気合だ…とはいきたいところだが、オレのガラじゃない。説き伏せてみるか…)

堀江「現在野球部には三人しか、部員がいません」
みずき「ふーん」
堀江「このままでは、野球としての活動もままなりません」
宇津「それがどうしたんだい?オレ達にとって、部の一つや二つ、つぶすのは…」
堀江「そうやって、力の無いものを見捨てていく風潮が、部に立てばどうなりますかね」
みずき「む」
堀江「革命って、言葉。ご存知ですか」
宇津「みずき会長の祖父はこの学校の理事だぞ、そんな」
堀江「祖父がどれほどみずきさんのことをお気に召しているかは知りませんが、孫があまりにもわがままで手を焼くなら、他の手段も考えるんじゃありませんか?」
宇津(コイツ…学長に直談判する気か)

みずき「いーよ」

堀江「…は?」
宇津「会長!?」」
みずき「認めちゃうって、言ってるの。許可許可〜」
宇津「し、しかし…」
みずき「いいじゃん、なんか難しい話になってきたし。難しい話聞くの嫌いだし…もうすぐお昼も終わっちゃうし、許可でいいんじゃない?野球部も苦労してるみたいだし」
宇津「…はぁ」
堀江(なんとなく、腑に落ちないが…まあ、よしとするか)


―――

堀江「許可を、いただいたぞ」
矢部「やったでやんすーー!」
監督「よくやったぞ、堀江!」
堀江(…完全にあの生徒会長のご機嫌次第だがな)
(コンコン)
宇津「…やぁ」
堀江「あんたか、浮かない顔だな」
宇津「ま、キミもあの方に仕えてみればわかるよ」
堀江「ごめんだ」
宇津「だろうね…ふふ。まぁ、いいさ。部員を集めてきたよ」

石田「お、おいおいオレちょっと中学のころかじってただけだぞ」
市川「な、なんだか急につれてこられたんですが…」
岩崎「あ、あの〜…ここで、いいんですか〜?」
青山「ちょ、ちょっと!何するのよ!!生徒会だからって横暴じゃない!?」

堀江「…待て、一名女が混ざっているんだが」
矢部「大歓迎でやんす!!」
宇津「生徒会長の命令なんでね…まぁ、雑多に集めてきた」
石田「まぁ、オレは部活やってなかったからいいけどさ」
市川「ぼ、ボクはサッカー部だったんですが…」
岩崎「僕は天体部〜」
青山「あたしは女子ソフトよ!!もう、部の人たちも納得しちゃうし…この学校ちょっとおかしいんじゃないの!?」
宇津「そういわれましても、生徒会の命令は絶対なんで」

堀江「先生、女子が…」
青山「ちょっと!そこのアンタ!!あたしだって来たくて来たんじゃないって言ってるでしょ!」
堀江「いや、そうじゃなくてだな…あの早川選手のときの特例はまだ適用されるんですか?」
監督「あー、アレな。…どうだろなぁ、アレ以来野球やる女の子がいないもんだから…でも地域別だとやってたみたいだけど?」
堀江「後で連絡しないと、ですね」
青山「ちょっと!わからない話をしないでよ!!」
堀江「ずいぶんとやかましい女子だな、少し静かにしていてくれ」
青山「なっ…む、むきーーー!」
矢部「ちょ、ちょっと堀江君、せっかくの新入部員なんだから、歓迎するでやんすよ」
青山「そうよそうよ!メガネの言うとおりだわ!!」
堀江「あいにく、オレはそういうことが苦手なんでね。必要最小限しかできないんだ、悪いな」
青山「ぐ…い、いつかギャフンと言わせてやる!」
堀江「野球で言わせてくれ」


矢部「と、とにかくこれで練習も充実するでやんすね!」
太鼓「うむ、やはり先生の判断に間違いはなかったということだな!」

堀江(…生徒会に媚を売らなければ、生きていけないのか…さてさて、胃に穴が開くのはいつの日になるのか…)


―――
SHOPにて
堀江「ん?どうしたんですか、このダンボールの山…」
根霧「ちょっと、お店のほうで整理してたらいろいろと在庫過多なものがいくらかあって…処分するのももったいないし…よかったら堀江君いる?」
堀江「いいんですか、そんな簡単に…」
根霧「うん、どうせあまり売れないのもあるし…」
堀江「確かに…」
根霧「どうする?」
堀江(ふむ…)

→バラ

堀江(部員集めには、あのキザ野郎の機嫌をとらなきゃ駄目だろう……ちっ、媚か…涙が出そうだ)
根霧「バラにするの?あ、もしかして…」
堀江「違います。これが、バラが好きな男もいるんですよ」
根霧「え…ま、まさか」
堀江「違います」





五月

矢部「今日は教育実習の先生が来るでやんす」
堀江「ふーん…」

(ガラガラ)

聖名子「教育実習に来ました、橘聖名子(たちばなみなこ)です、よろしくおねがいします」
矢部「ドッキーン!春の目覚めでやんす!」
堀江「やれやれ…ま、うちの監督よりはマシかな」
聖名子「よろしくね、キミ達」
矢部「はいぃぃいいいいい!」

――――

(キーンコーンカーンコーン)

〜昼休みなの〜

堀江「矢部、いい加減落ち着けよ。確かに綺麗だが」
矢部「堀江君の目は節穴でやんすか!?オイラ練習にも気合が入るってもんよ!でやんす!」
堀江「…そういえば、橘…って」

(キキー!)

堀江「ん?校門の前に車が…おいおい、ロールスルイスかよ。やっぱ金持ちは、違うねぇ…」


(ガチャ)
「どうぞ、学長」
???「うむ、校内を見学させてもらおうか」
みずき「おじいちゃん、いらっしゃい」
???「みずきか、出迎え感心だな」


堀江「ふーん、祖父ねぇ。猫かぶっちゃってまぁ」



学長「どうしゃみずき、よい子にしておるか?」
聖名子「おじいさま、お久しぶりです。教育実習の許可ありがとうございます」
学長「聖名子か。家を離れたお前に、おじいさま呼ばわりされる覚えはない」
みずき「おじいちゃん」
学長「お前が試験で合格して、実習生になっただけのことじゃ。ワシとは学長と実習生の関係じゃ」
聖名子「分かっています…学長」
みずき「お姉ちゃん…」
学長「行くぞみずき」
みずき「は、はい…」




堀江「ふーん、訳ありみたいだな」
矢部「み、聖名子先生にあの態度!許せないでやんす!」
堀江「ほっとけよ、金持ちには俺らのわからない事情があるんだろうさ」
矢部「それはそうでやんすが…」
堀江「それよりも、あのみずき様の立ち姿があんなにしょんぼりしてるのは初めてだぜ。愉快っちゃ愉快だが、なかなか要望は開いてくれなさそうだな…」
矢部「…堀江君はクールすぎるでやんす、もうちょっとみずきちゃんの心情を…」
堀江「察してるよ、少しでも要望が通るんなら、媚を売っとけばいいだけ、の話だろう?」
矢部「…」

――――


堀江「七月の頭から県大会か…」
矢部「大会は九人いないと出られないでやんすよ」
堀江「わかってるさ…次のご要望会議でも部員を集めないとな」


―――


六月

堀江「やれやれ…」
矢部「探したでやんす。堀江くん、さっきいなかったでやんすね」
堀江「トイレだ」
矢部「そ、そうでやんすか。…そうじゃなくて、さっき監督から大事な話があったでやんす」
堀江「む…?」
矢部「今週からなんとミーティング練習を導入することになったそうでやんす」
堀江「なるほど…頭が空っぽ、って訳でもないんだな、あの先生は」
矢部「知ってるでやんすか?ミーティング」
堀江「名前を聞けば大体想像がつく。どうせ、議論とかでより効率のいいトレーニングを考える場にするんだろ。俺は月一で決まった日に全員で開いたほうがいいと思うがな」
矢部「…そ、そうでやんすか」

(ピンポンパンポン♪)
「今週はご要望会議を開催します、ふるってご参加下さい」
矢部「あ、会議でやんす!」
堀江「本来なら、部長のはずの太鼓先輩に行ってほしいところなんだがな…持ち上げるの上手そうだし、あの女は機嫌だけとっていればなんとかなるだろうに」
矢部「頼むでやんすよ、堀江君!!」
堀江「期待するなよ」


―――

(ガチャ)
みずき「あら、堀江君」
堀江「こんにちは、会長」
宇津「また来たのかい?キミ達もわがままだなぁ」
堀江「ま…そんなところです、部員が九人揃わないと大会にも出られないんで」
宇津「ということは、またオレって訳か…ま、いいよ。野球部も最近ずいぶんがんばって練習してるみたいだし、オレは部員を集めてやってもいい」
堀江「また、無理やりやるのか?」
宇津「ま、できる限り穏便にはすませたかったのだがな、前の青山さんは少し無理やりだったが、なにせ時間がなかったものでね」
堀江(このやり方にはついていけないな…)
宇津「ま、ほとんどの学生がもう部に入ってるんでね、なかなか上手く調整はとれないんだよ、この短期間では」
堀江「心情、察する」
みずき「ちょっと、私を無視して話を進めないでよっ!」
宇津「し、失礼しました…」
みずき「ま、許可するんだけどね〜」
堀江「は?」
宇津「は、わかりました。それではすぐに手配を…」
堀江「ちょ、ちょっと。いいのか?」
みずき「いいよ〜♪今日は機嫌がいいの、みんなに許可あげてるし」
原(実は、みずきさん今朝の占いが一位やった、つー話ですわ)
堀江(単純な…)

―――

(がちゃ)
宇津「キミがあんまり無理矢理は好まないというんでね、どうにか部活未所属の人たちを集めてきたよ」
青山「…最初からそうすればいいのに」
矢部「まぁまぁ、落ち着くでやんす」

松尾「いよっ!オレ松尾、よーろしくなー!」
日下部「………ども」
武田「武田でごわす!!」

堀江「…なぁ、もっと、こう普通なのは」
宇津「キミもわがままだな」

―――

青山「ちょっと、堀江!」
堀江「なんだ青山理穂」
青山「なんでフルネームで呼ぶのよ!」
堀江「一応、部員名前ぐらい全員覚えようと思ってな」
青山「ふ、ふーん…そ、そうなの」
堀江「なんだ、下の名前で呼んでほしいのか」
青山「なっ、そ、そんな訳ないじゃない!馬っ鹿じゃないの!」
堀江「典型だな」
松尾「おー堀江!こんなところにいたのかっ!」
堀江「松尾啓か、どうした」
松尾「いや、監督が、数学の小テストの補修で遅れるから勝手に練習していてくれってよー」
堀江「…主将の太鼓先輩に言ったらどうだ」
岩崎「それが〜、太鼓先輩〜塾で帰っちゃったんですよ〜」
市川「ど、どうしましょう?」
石田「どうするって…練習だろうが、なぁ堀江」
武田「そうでごわす!!」
堀江「…キャッチボールから、始めるか」

――――


理穂「ちょっと、堀江。今暇?」
堀江「なんだ、お前か…俺は忙しいんだが」
矢部「あ、理穂ちゃんでやんすーどうしたでやんすか?」
理穂「んーと、その暇だったら昼一緒に食べない?」
堀江「なんだお前、友達いないのか」
理穂「う、うるさいわね!!今日はたまたま一人なのよっ!」
矢部「そういえば、いつも一緒にいる女の子がいないでやんすね」
理穂「そういうこと、一人で食べるのも寂しいじゃない?」
堀江「あ、そう。勝手にしてくれ、俺は学食に行く」
理穂「ちょ、ちょっと!じゃあ私も行くって」
矢部「オイラもいくでやんすー!」
市川「あ、ぼ、僕も一緒に」
理穂「あら、市川君」
堀江「お前も同じクラスだったのか」
市川「う…ひどいです」

(ピンポンパンポン♪)
「ご要望(略」

堀江「む?」
矢部「会議でやんすね〜堀江君」
堀江「たまには、青山、お前がいかないか?」
理穂「え?!む、無理よそんなのっ!大体私…橘さんと面識ないし」
堀江「俺もだ」
市川「え?でも、ずいぶん橘さんと話してるみたいですけど…」
堀江「たまたまだ」
理穂「いいからアンタ行きなさいよ、ほら、早くっ」
堀江「…やれやれ。部員も集まったし、次はどうするんだ」
矢部「そうでやんすねー、部費とか増えないでやんすか?」
理穂「もっと女の子を呼んできなさいっ!」
市川「コーチとか、いないんですかね…?」

堀江「…ふーむ、わかった。期待するなよ」


―――

(ガチャ)

堀江「どーも」
みずき「…」
堀江「今日も人事だ、悪いな宇津君」
宇津「いやいや、もう慣れっこだよ」
みずき「…」
堀江「会長、ずいぶん静かですね」
みずき「めんどいのよ、なにもかもが、地球とか滅びればいいのに」
宇津「とまぁ、今日のご要望は全滅です」
堀江「あのなぁ、自分で開いてるんじゃないのか」
大京「今日は、学長様からのご要望なのです、たまには開いてあげろ、と」
堀江「なるほどね…」
原「ま、あんまりがんばってもがんばらなくても結果は一緒やで」
堀江「ま、一応。お願いしてみる」
みずき「あのね、全部聞こえてるんですけどー!」
堀江「…却下ですか?」
みずき「却下です」



―――


七月

堀江(たまには、買い物にでも行くかな、日曜日だし。服も買いたいし…)
みずき「ふんふふーん♪」
堀江「…」
みずき「ちょっと!何他人のふりしようとしてるのよ堀江君!」
堀江「はぁ、なんですか会長」
みずき「こんな美少女が町を歩いてるんだから声ぐらいかけなさいよ!」
堀江「じゃあ」
みずき「ちょ、ちょっと待ってってば!」
堀江「なんだ、この前とは違ってえらくご機嫌だな」
みずき「なによ、まだ恨んでるの?仕方ないじゃない、あの日は…その、いまいちだったの」
堀江「あんたが気分屋なのは、もう、嫌になるほどわかってる」
みずき「…いちいち一言多いわね。まぁいいわ、実は今日は、デートなの!」
堀江「物好きもいたもんだな…」
みずき「あのね!!お姉ちゃんと、よ!」
堀江「ふーん、ではいってらっしゃい」
みずき「あ、ちょっと!…もう、つれないんだからぁ、荷物もちぐらいしてもいいじゃない」

―――

聖名子「お待たせ、みずき」
みずき「お姉ちゃんが一人暮らしを始めたから、久しぶりだよね」
聖名子「そうね…ごめんね、みずき」
みずき「ん??」
聖名子「私が家を出たばっかりに、あなたにおじいちゃんの期待が集中しちゃったね」
みずき「ああ、いいのいいの、そういうの嫌いじゃないし。でもおねえちゃんの気持ちちょっとわかるよ…」
聖名子「みずき…」
みずき「あー辛気臭い、この話は無し!」
聖名子「そうだ、プロ野球でも見に行く?近くでやってるし」


―――

『かっとばせー!』
みずき「オリックスかぁ…流石に日曜日だと、ちょっとは入ってるね」
聖名子「ちょ、ちょっとみずき、先先行かないでよ」
みずき「でも、内野でも席空いてるなぁ…おねえちゃん、こっちこっち」
聖名子「も、も〜〜!」
みずき「どうするおねえちゃん?もうなんか買ってくる?」
聖名子「う、うん。おねえちゃん、野球とかあんまりだし…あら?あの真ん中の人は?」
みずき「ん?あー、えっと、あれはピッチャーっていって…」

『オリックス先発の神童投手大きく振りかぶって投げた!』

カキーーーンッ!!

神童(いや、打たれてもあのコースはファールにしかならないはず…)

『打球は大きくそれてファール!』
『ファールボールにご注意下さい』

みずき「それで、右がライト…」
(ズドーン)
みずき「ぎゃ!!!な、なんのよ!直撃しかけたじゃない!あぶないわよ!」
聖名子「み、みずき、ちょっとはしたない…」
みずき「まったく!最悪だわ!あ、こんな時間、今日は塾があるんだった…」
聖名子「そうね、じゃあここで…」
???「すみません…」

みずき「何よ…って、あ、し、神童裕二郎投手!?!?」
聖名子「確か真ん中の人ですよね?」
みずき「お、おねえちゃん何言ってるの!球界を代表するエースなのに」
神童「あ、いや。ファールボールでご迷惑をかけたようで…申し訳ありません」
みずき「へ?わ、私のこと心配してくれてるの?」
神童「お怪我はありませんか?」
みずき「は、はい!!ケガなんてもう!全然!」
神童「よかった…そうだ、失礼でなければお二人にお詫びをさせていただけないでしょうか?」
みずき「え、いいの?」
聖名子「まぁ、誠実な方…でも妹は用がありまして」
神童「それは残念だ…では、お姉さんだけでも」
聖名子「でも、私は…」
神童「このままでは僕の気持ちがおさまりません」
聖名子「そうですか…では、お言葉に甘えて」

みずき「…もしもーし。あの…ってかボールが当たりかけたのは私だってばさ!!」


―――

理穂「あ」
堀江「…」
理穂「だからあんたはなんで無視しようとするのよっ!!」
堀江(…面倒な日曜日だ)





―――
(ぴんぽ(略

理穂「あんた今日こそはがんばりなさいよ!!」
日下部「…」
武田「ファイトでごわす!」
松尾「気合だーーー!!!」

堀江「…無駄だ。今日は朝から会長様の顔に生気がない」
矢部「確かに…日曜日に何かあったでやんすかね?」
堀江「さぁな、行くだけ無駄だと思う、が」

理穂「それでもいきなさいよ!」
堀江「やれやれ…」




みずき「却下」





堀江「だろうな…」
(とぼとぼ)
堀江(ちっ、いつまで媚売らなきゃならないんだ、俺は。反吐が出そうだ…もっと交渉が上手くいくコツはないのか)
堀江「ん?」

「あ、あの先輩!」
「どうしたの後輩の鈴木君」
「お、俺…先輩のことずっと前から大好きでした!つきあってください!」
「…!でも、わたし…貴方の気持ちはうれしいんだけど…」
「これ、俺の気持ちッス!!!」
「…!これは、私が前からほしかったバッグ!!」
「先輩のことならなんでもお見通しッス!!」
「鈴木君…私でよければ」
「ほんとですか?やったー!」

堀江(これだから女ってのは……しかし、プレゼントか…)



―――

堀江「というように、生徒会にプレゼントを贈ったらどうだ」
矢部「なんと!それは大胆かつ露骨な手段でやんすね!」
理穂「なるほどねぇ、あんたらしくないけど」
石田「それならいけるかもな!」
堀江「いい加減早く設備を充実させたいんだ、それならもう媚は売らなくてすむ」
理穂「あんた本当にいやそうな顔してるもんねぇ、会議の時」
堀江「宇津との皮肉な会話が唯一の癒しだ」
松尾「や、病んでるなー!」
堀江「というわけで、生徒会が好きなものを調査する必要がある」
矢部「そーいうことならオイラにお任せでやんす!身辺調査は得意技でやんす!」
理穂「ちょっとー、メガネストーカーとかしてないでしょうね」
矢部「してないでやんす!!早速ミッションを開始するでやんすよー!」
堀江「つーわけで、俺と矢部が二人でやる。後の奴らは、報告を、待つように」

―――

休み時間に筋トレ、専用のバラ園、学食での値引き、授業をさぼってプリン。
堀江「むちゃくちゃ、だな」
矢部「やりたい放題でやんす…」
堀江「しかし、大京はプロテイン、宇津はバラ、原はオニギリ」
矢部「そして、みずきちゃんはプリンでやんすか…」
堀江「…案外あっさりだったな」
矢部「調査なんてえてしてこーいうもんでやんす」
堀江「しかし、これらをどうやって入手するか…」
矢部「実は、あるスジからそれぞれ一通りGETしたでやんす」
堀江「早いな…」
矢部「おいらが本気を出せばこんなもんでやんす」
堀江「それをもう少し野球にだな…まあいい。次の交渉は、これでなんとかしてみるか…」



――――

太鼓「静粛に!今から監督が県大会のメンバーを発表する!」
監督「ん、まぁ楽にしてくれや」
矢部「ついにここまで来たでやんすね!」
堀江「…奇跡だ」
理穂「なんでやる気ないのよ」
松尾「レギュラーに選ばれるかなー!石田!!」
石田「いや、俺は投手だし、太鼓先輩が先発だろ」
武田「楽しみでごわすー!!」

そしてレギュラーが発表された。

理穂「ま、こんなもんね。試合はいつなの?」
堀江「せっかちだな、すぐそこだ」
矢部「ついに…大会でやんすか…」




そして、大会の日。
相手は、株高校、後はちょっと省略。


2-12


矢部「み、見事にボロ負けでやんすorz」
理穂「う、なんで〜〜〜!」
堀江「即席チームじゃこんなもんだろ、大丈夫だ、まだチャンスはある」
太鼓「すみません…私のふがいないピッチングのせいで…」
堀江「いや、太鼓先輩だけのせいじゃない。俺たちの守備も甘かった。…早速帰って練習だ、落ち込んでる暇はない」
全員『おう!!!』



――――

堀江「…あれは」
原「こればっかりはゆずれへんな」
宇津「ボクだって引けないよ」
大京「私の意見はどうなるのですか…?」
堀江「生徒会の三人か、何をもめてるんだか。どうしたんだ」
原「ん?堀江やんけ」
宇津「今日、放課後遊びに行く予定なんだが、意見が揃わなくて」
原「せや、ここはひとつ堀江に頼んでもらうってのは、どうや?」
宇津「そうだね、このまま話してても埒があかなさそうだし」
大京「第三者の判断なら納得がいくというものです」
堀江「おいおい…部外者を巻き込むなよ」
原「頼むで堀江!お前の判断がオレらの大切な青春の半日を決めるんやで!」
堀江「やれやれ…」
原「俺の知り合いのたこ焼き屋か!」
宇津「ボクの先輩の路上のライブか!」
大京「私の行きつけのジムか!」
堀江(ジムはねーだろ…)
宇津「さぁ、DOCHI!!」
堀江「ま、学生らしいかどうかはしらんが、ライブにでもいったらどうだ」
宇津「流石堀江、わかってるな!」
原「ああ、俺のたこ焼き屋が…」
大京「仕方ありません原、従いましょう」

『SAY HO〜!』
『HO〜!』

堀江「…HIPHOPかよ、宇津。イメージ違うぞ」







八月

『ご要望会議やで〜』

堀江「原か、大変だなアイツも」
理穂「ちょっと!今回こそなんとかしなさいよ!」
堀江「毎度毎度お前は無責任だな」
矢部「大丈夫でやんす!アイテムもあるでやんすしねー!」
松尾「ファイトだぜ!堀江!!!」
堀江「期待するなよ」


―――
(ガチャ)

堀江「ども」
宇津「やぁ、先日はどうも」
堀江「いや、別に…」
みずき「ハロー堀江君、どしたの、今日は?」
堀江「コーチとか、雇えないかと思いまして」
宇津「人事ならボクかな。よし任せてくれ」
堀江「なんだ、ずいぶん協力的だな。いやなに、この前のお礼さ…しかし、決めるのはみずき会長だ」
みずき「うーん、コーチねぇ…」
堀江「ここに、パワ堂のプリンがある」
みずき「採用ーーー!!」

堀江「…大丈夫か、生徒会」

(暁大の小久保選手がコーチにきてくれました)

―――

〜学長室なの〜


みずき「ただいま生徒会が終わりました」
学長「おお、みずき。うわさは聞いておるぞ。生徒会がんばってるようじゃな」
みずき「はい、おじいちゃん」
学長「橘家の人間たるもの、人の上に立つ必要があるのじゃ…聖名子はその素養がなく困惑したが、お前なら任せられそうじゃ」
みずき「うん…」
学長「ともかく勉強しておけば、将来橘家を任せられる、器の大きいお婿さんを見つける目も養われるからのぉ」
みずき「はは、そうだね。あ、塾の時間だ…もう行くね」
学長「うむ、しっかり学んでくるんじゃぞ」
みずき「…」


―――

みずき「はぁ…憂鬱なの、閉鎖空間とかできそうなのよ…」
堀江「他作品を持ってくるな」
みずき「う、うわあ!いきなりびっくりするなぁもう!」
堀江「びっくりしたのは俺だ、なぜ野球部のグラウンドのそばで練習をずーっとじーっと見てるんだ、気になって練習に集中できん」
みずき「…別にいいじゃない」
堀江「なんだ、興味あるのか野球に」
みずき「べっつにー…ウチの野球部しょぼいなぁ、と思って」
堀江「そうだな、俺もそう思う」
みずき「そこは反論するところでしょ」
堀江「事実だ」
みずき「相変わらず、冷めてるのね堀江君は」
堀江「会長さんほどじゃないさ」

カチン。

みずき「な、なによ!私だっていろいろあるのよ!!」
堀江「俺が知ったことじゃない」
みずき「ぐ…」
堀江「今日も塾なんだろ、一流大学を目指すお嬢さんは大変だな。がんばってくれ」
みずき「む、むきーーーー!」

理穂「とーう!」
矢部「ああ!理穂ちゃん!いきなりドロップキックは無茶でやんす!」

(スカァッ)

理穂「交わされた!?」
堀江「動きが大きすぎる、なんの用だ」
理穂「あ、あんたねー!流石にその口の利き方はないんじゃないの!」
石田「そうだぞ、失礼ってもんだろうが」
堀江「事実だ」
みずき「あ、えと」
理穂「あ、ごめんね橘さん!こいつ本当に失礼な奴でさー、もう皮肉がとまらないのは病気なの」
堀江「おい」
みずき「…あ、うん」
堀江「会長は塾だそうだ、夢の邪魔をしないでやってくれるか」
矢部「なんだかえらそうでやんすねー」
堀江「そんなことはない」



みずき「野球部、かぁ…楽しそうだなぁ」




――――

九月


『ご要望会議だ、必要な…ケヘェッカハァッ』
堀江「…宇津、むせたな」
理穂「期待してるからね!!」
松尾「そうだぜホーリエ!大期待だからな!」
堀江「だから他作品を…いや、作品でもないか」

―――一時間後―――

(ガチャ)

堀江「部員を連れてきたぞ」
武田「おおおおーー!でごわす!」
矢部「さっすがほっちゃんでやんす!HEYHEYHEYにも出れるでやんす!」
市川「ホリエモンすごいです!」
堀江「あのな…ちなみに、青山が希望の女子を不本意だが連れてきた」
理穂「なによ、不本意って」
堀江「……理由、言おうか」

星「あ、あの、けんかはやめてくださぃよぉ…おろおろ」
山内「その通りね、こんなところでもめられても困るわ」
理穂「おおー!本当に女の子だ!!私青山理穂、よろしくー!」
星「あ、あ、ほ、星佳奈美です、よ、よろしくですぅ…」
山内「山内鈴華よ、よろしくね」

堀江「はぁ…こんなに女子部員がいる野球部、全国探してもウチだけだろうなぁ…」
矢部「ものすごいラッキーでやんす!!」
松尾「おーい俺松尾、よろしくなーー!!」

堀江「…野球、できるかなぁ…」


―――

みずき「塾、いってきます」
学長「うむ」

(スタスタ)
〜首都大学室内練習場〜

みずき「お待たせ」
原「遅いで〜みずきさん」
みずき「ごめーん、おじいちゃんの監視が厳しくて」
宇津「ま、学長の監視じゃしょうがないね」
大京「じゃ、はじめますか」

『よーし始めるぞー!』
全員「お願いしまーす」


カキーンッ!!
『原!いいミートだ!』
原「おおきにです!」

ビュッ!
『球が伸びてきたね、宇津くん』
宇津「ありがとうございます」

グアッキィイイインッ!!
『大京、いいスイングだな』
大京「恐縮です」

みずき「さて、いっくわよー!」
ギューーーンッ!!
『みずきくんの秘密兵器も完成してきたネ』
みずき「へへーん」

〜三時間後〜

『よし、今日の練習はここまで』
全員「ありがとうございました」

『惜しいネ、キミたちは高校レベルならトップクラスなのにネ』
みずき「あはは…」
『おっと、大きなお世話だったカナ」
みずき「いえ、ありがとうございます。お疲れ様でした」


――――

原「大京のお兄さんが大学の野球部の主将、副主将と知り合いでよかったなぁ」
宇津「しかも、事情を説明したら練習場を貸してもらえるだけでなくコーチもしてくれるなんてね」
大京「恐縮です」
みずき「…」
原「どないしたん?みずきさん」
みずき「…ねぇ、みんな。私のことはいいから、みんな野球部に入りなよ」
大京「みずきさん?」
原「前にも言ったやないか!シニアリーグの時から四人でいっしょに甲子園に行こうって」
宇津「みずきさんがいたから今の僕たちがいるんじゃないですか!」
原「みずきさんや、みずきさんの両親には感謝してもしきれないくらい恩があるんや!」
宇津「みずきさんの甲子園の夢をかなえるため、できることなら練習でもなんでもお供しますよ」
大京「私も、同意見です」
みずき「みんな…ありがとう、わかったよ」
原「でも、学長が反対してるのをどーするかやな」
宇津「ボク達で力になれたらいいんだけど…」
みずき「うん、おじいちゃんだねぇ…」

みずき「あ!!!そうか!いけるかも…にしし」

―――

堀江「…ハックション!!…風邪か?秋だな、寒いし」


―――



今日から県大会だ

堀江「スタメンを…なんで俺が発表しなきゃならないんですか」
監督「もう、お前が監督みたいなものだろ、うん」
堀江「…わかりました」


一番 矢部 「でやんす!」
二番 星  「え、え、私ですかぁ…」
三番 青山 「任してよ!!」
四番 松尾 「いよっしゃー!!」
五番 堀江 「…やれやれ」
六番 岩崎 「はい〜」
七番 山内 「わかったわ」
八番 市川 「はい!!」
九番 太鼓 「うむ」

堀江「妥当かな…しかし、女子陣の方が男子より野球が上手いというのは…」
涼華「あら、当たり前よ。私とカナはソフトやってたんだから」
佳奈美「は、はい、その、一応ですけど…」
堀江「…成る程」
理穂「私も負けてらんないわね!!」
矢部「おいらもでやんす!」

堀江(…この戦力じゃ、コールドにならなきゃたいしたもんだろ)



一回戦 灰凶高校
やっぱり試合は省略



3-4で敗北


理穂「あああーーー!!」
涼華「惜しかったわね…!」
佳奈美「負けちゃったですぅ…」
矢部「でも皆確実に力がついてるでやんす!!」
市川「そうですよ!一点差ですし!」
太鼓「そうだな、なんとかなりそうですね、先生!!」

堀江(…ここまで食い下がれたか…しかし、やはり即席チームだ。勝つには後少し、足りない。チームの中心となれる、力が…)

――――

十月

日下部「…そのそろそろ、ウチの部の大会があるから、抜ける」
堀江「は?」
矢部「あ、そういえば日下部君は兼部してたでやんすね」
日下部「そういうわけで…さよなら…」
堀江「あ、おい。…行ってしまったな」
理穂「しょーがないよ、人にはそれぞれいく道があるんだから」
涼華「そうね…」

堀江「…というか、おい、この中で兼部してる奴」

市川「はい」
岩崎「はい〜」
武田「はいでごわす!」

堀江「あれ?青山、お前は確か…」
理穂「しょ、しょうがないじゃない!今更戻れないわよ!!べ、別にあんたのためになんかじゃないんだからね!」
堀江「…何も言ってないんだが」
涼華「理穂…わかりやすすぎるわ」

堀江「とにかく、後の奴はうちだけってことだな…そうか。ちょくちょく生徒会に行って部員を増やしてもらわなければ駄目、ってことか。辛いところだな」


――――

二月


矢部「堀江君!!でやんす!!」
市川「堀江く〜ん」
松尾「おい!堀江!!」
堀江「なんだお前ら、急に…」
矢部「なんだって、今日はバレンタインデーでやんすよ!!」
市川「そうです!」
松尾「そうだぜ!!」
堀江「…ふーん」
矢部「そりゃないでやんす!!冷めすぎでやんすよ堀江君!!」
堀江「興味ないんだ、俺は眠いから寝る」
市川「ちょ、ちょっと堀江君!」

理穂「…あら、堀江寝てるの?」
佳奈美「あ、あの皆さんチョコレート作ってきたんですけど…」
涼華「良かったわね、佳奈美が優しくて」

矢部「うおおおおおおおでやんす!!!!」
松尾「やりいいいいいいいいいい!!!」
市川「あ、ありがとうございます!」

佳奈美「あ、あの、堀江さんも、ど、ど、どうぞです」
堀江「…甘いものは嫌いなんだ、パス」
佳奈美「ふぇ…」
理穂「ちょ、ちょっとちょっと!!待ちなさいよ堀江!!」
涼華「そうだぞ堀江君、せっかく佳奈美が一生懸命に作ったのにだな」
堀江「それはあんたらの都合だろうあ」

矢部「馬鹿野郎ーーーでやんす!」
バキィイッ!!

矢部「女の子からチョコをもらえるというのになんたる態度!許せないでやんす!」
松尾「そうだぜ堀江!!」
堀江「…ちっ」

(ガタッ)

矢部「あれ?ちょ、ちょっと、堀江君どこへ行くでやんすかー?」
松尾「な、なんや、拍子抜けやなぁ」
佳奈美「わ、わたしの、せいですかぁ…ふぇ」
涼華「佳奈美のせいじゃないわよ」
理穂「そうよ!あのアホのせいよ!まったく許せないわ!!」
涼華「せっかく理穂も作ってきたのにね」
理穂「へ!?え、いや、そ、その別に私は…」
市川「あ、そういえば今朝堀江君の橘会長からチョコレートもらってましたよ」
全員「なんですと!?」
市川「それに、わさびが入ってたらしいです」
全員「…ああ」


―――


*二年生



四月


矢部「二年生でやんすかー…」
堀江「長いようで短かったな」
理穂「ねぇねぇ堀江、後輩とか入ってくるんじゃないの!?」
佳奈美「わたしたち、先輩さん、ですね」
武田「どんな奴が来るか楽しみでごわす!」
石田「ま、普通の奴しかこないだろー」


監督「おい、お前ら静かにしろー。今から新入部員を紹介するぞー」


そして、部員紹介は滞りなく続いた。

宇都宮「ちーす、宇都宮ッス、一年生ッス」
矢部「ず、ずいぶん派手な奴でやんすね」
理穂「なんでベルトにあんなストラップつけてるのよ?」
堀江「さーな」
星「おろおろ…」
松尾「おいおい、星がびびってんぞ」

―――

矢部「変な奴もいたでやんすがやっぱり普通の紹介でやんすね」
理穂「といいつつ、目線は最後の子にいってるわよ」
堀江「また女か…勘弁してくれ」

監督「最後はすごいぞー!なんと女史選手の六道聖(ろくどうひじり)君だ!」
六道「…」

堀江(これまたなんか好きになれそうにないタイプだな)
理穂「何いやな顔してんのよ!歓迎しなさいよ!」
監督「キャッチんぐ、バッティング共すばらしいセンスがあるそうだ。一言挨拶頼む」
六道「…」
矢部「無愛想な子でやんす、でも女の子で野球部って何者でやんすかね」
堀江「今さらだろ」
矢部「違うでやんすよ、理穂ちゃんや佳奈美ちゃん、涼華ちゃんは生徒会に連れられてきたでやんす。あの子は自主的でやんすよ」
堀江「さぁな…」
太鼓「なんでも、生徒会長の特別推薦枠で入ってきたらしいですよ」
堀江「橘会長の?」
矢部「でも、女の子だし、慣れるまでは大変そうでやんす」
理穂「あのね、一応私も女の子なんだけどー!」

(ざっ…)

六道「そこのメガネ、なら、試してみるか」
矢部「先輩にタメ口とは生意気でやんす!お仕置きでやんす!」
堀江「やめとけ、この展開はやられるフラグだ」
六道「…ん?お、お前は…」
堀江「なんだ、俺の顔になにかついてるか」
六道(いや…違うな、他人の空似か)

―――

矢部「このバッティングマシーンを打つでやんす、ヒット勝負でやんす」
六道「なんでもいいぞ」
矢部「まずオイラからいくでやんす」

カキーン!
カキーン!!

佳奈美「すごいですぅ…!」
市川「矢部君、珍しく絶好調ですね」
堀江「たまたまだろ」
矢部「ざっとこんなもんでやんす、次は聖ちゃんの番でやんすよ!」

―――

カキーン!
キィインッ!

矢部「振り遅れてるでやんすか?そんなことじゃストレートは打てないでやんすよ」

カキーンッ!

矢部「ス、ストレートでも当たるでやんすね」
堀江「矢部、お前の負けだ」
矢部「ど、どうしてでやんすか!?」
堀江「見ろよ、打球が全部ファーストベースに当たってる」
矢部「…な、なんと!?でやんす!」
六道「…そんなに珍しいか」
堀江「狙ったのか?」
六道「神経を集中すれば簡単だ」
堀江「ふーん、青山、お前とはえらい違いだな」
理穂「な、なによっ!」
佳奈美「け、けんかはやめてくださいです…」
涼華「ふーん…うかうかしてられないわね」


――――

(ピンポンパンポーン)
『今日も、ご要望会議』

堀江「やれやれ…いってくるか
矢部「今日も今日とて会議お疲れ様でやんす」
堀江「そう思うならお前が行け」
聖「会議とはなんだメガネ先輩」
矢部「おいらは矢部でやんす!」
宇都宮「うぃーす、俺もー、気になってるんすけどー」
理穂「そうね…どう説明したらいいかしら」
聖「青山先輩は、会議に出たことがあるのか?」
理穂「え?うーん、っていうかいつも堀江が行くのが基本になってるから…」
松尾「だなー、堀江説明してやれよ、俺わかんねーし」
堀江「今度から絶対誰かついてこい」
聖「では、私がついていきます」
理穂「しょうがないわね、私も行くわ」
宇都宮「じゃ、俺もー」
松尾「お、じゃ俺も俺も」
矢部「オイラもいくでやんす!」
堀江「……俺行かなくてもいいか」


―――

みずき「…今日は、ずいぶん大所帯ね」
堀江「すまないな、騒がしくて」
みずき(楽しそうでいいなぁ…)
理穂「で、私たちは何をすればいいの?」
堀江「黙って見てろ」
聖「だ、そうだ」
宇都宮「先輩がんばれーみたいなー」
矢部「ファイトでやんす!」
松尾「気合いれろやー!」

宇津「おやおや」
原「堀江楽しそうやなーお前んとこ」
大京「仲のいいことは、すばらしいことだ」

堀江「ありがとよ…ところで、今日は合宿をだな…」
みずき「許可しちゃうもんねー!!」
堀江「早いな、おい」
宇津「いえ、『許可しちゃうもんねー』という台詞にはまっているらしく」
堀江「…生徒会やめたほうがいいと思うぞ」


―――

堀江「というわけで、二日間のショート合宿だ」
太鼓「人数が揃えばなんでもできるものだな」
矢部「堀江君、混浴でやんすか!!」
堀江「男女別だ、もちろん部屋もだ」
理穂「あ、あたりまえよ!」
涼華「私はどちらでもいいけど」
聖「私もだ」
佳奈美「え…えっ、えっ?」
堀江「別の部屋だ」
宇都宮「ちょー残念みたいなー」
松尾「しかたねーなー」
市川「と、いうか当たり前ですよね」
堀江「つーわけで、多分省略されると思うが、明日から合宿だ。荷物を持ってくるように」
聖「堀江先輩」
堀江「なんだ六道」
聖「おやつはバナナに入りますか」
(どっ)
堀江「…入れたきゃもってこい」


――――

合宿、省略


六月


―――

聖「堀江先輩、悪いが少し休憩してくるぞ」
堀江「好きにしな」


―――
聖「ふぅ…」
みずき「イイ感じでやってるじゃん、聖」
聖「みずき…どうなんだ?まだこっちには来れないのか?」
みずき「まだいろいろ手間取ってて…ごめんね」
聖「大丈夫だ。私はずっと待っているぞ」
みずき「ありがと、聖。ところで、堀江君はどんな調子?」
聖「堀江先輩…冷めている人だな。だが実力は高い、正直どうしてこんな高校にいるのか驚いているが…それがどうかしたのか?」
みずき「え?う、ううん、別に…じゃ、聖、頑張って!」
聖「ああ、みずきもな」

―――
みずき「うーん…やっぱり堀江君かな。にしし」








――――

みずき「今日は確かおじいちゃんが偵察に来る日…よし」

「いくぜドライブシュート」
(ズバーン)

学長「うむ、みんながんばっとるようじゃな」

―――
学長「ここは、野球部か」

監督「行くぞノック!」
(スカ!)
堀江「…やれやれ」
松尾「監督ー!俺が変わろうかーー!」
石田「頼りになんねーなぁ」
理穂「先生!そこじゃなくてもうちょっと右!右!」
聖「今のスイングでは、上体がそりすぎている」


学長「まぁ、楽しくやっておればいいか」
みずき「おじいちゃん」
学長「なんじゃ、みずきか?」
みずき「お願いがあるの、私…野球部に入ろうと思うの」
学長「なんだと……ゆるさんぞ!いいか、お前はワシの言うことを聞いてさえいれば…」
みずき(やっぱ普通に言っても駄目か)
学長「いつも言っているじゃろうが」
みずき「勉強して器の大きい人と結婚して橘の跡継ぎになれって」
学長「そのとおりじゃ!お前のためを思ってなんじゃぞ!」
みずき「だーかーらー、そこなのよ」
学長「む?」


堀江「…ん、学長と会長。今日も仲の良いことで」
みずき「おじいちゃん紹介するよ。この人が私のフィアンセの堀江君」
堀江「…………は?」
理穂「ええええ!!!!」
聖「ど、どういうことだ堀江先輩!」
佳奈美「え?え?え?」
涼華「涼しい顔して…隅に置けないな」
松尾「手の早い奴だなー!お前!」
太鼓「まったく、油断ならないな」
監督「お前意外とやるなー」
矢部「ど、どういうことでやんすか堀江君!!」

学長「なんじゃと!こんなどこの馬の骨ともわからん男など認めん!冗談もほどほどにするんじゃ!」
堀江「おい、会長、学長の言うとおりだぞ…悪ふざけは」
みずき(いいから話あわせて!!)
堀江(…それはお前の都合だろうが!)
みずき(部費あげるから!!)
堀江(物で釣られる俺じゃない)
みずき(……おねがい、力を…貸して!)
堀江(……………ちっ、穏便に頼むぞ)

学長「何をべらべらと…」
みずき「おじいちゃん、この人はとっても器の大きなすごい人なのよ」
学長「なんじゃと!?笑止な、こんな奴になにがあるというんじゃ」
みずき「この人は将来プロ野球選手の超一流選手になるのよ!それを私は見届けるの!」
学長「部員もろくにいない野球部でプロ野球選手だと!」
みずき「うん、だから私もこの人からいろいろ学びたいのよ」
学長「くっくっく・・・そこまで言うなら認めよう」
みずき「お、おじいちゃん…」
学長「しかし、プロに入れなかったらお前はワシの決めた許婚と結婚するんじゃ」
堀江「お、おい!いいのか会長!?」
学長「くっくっく、これは楽しみじゃわい」
みずき「あ、おじいちゃん」
堀江「………行ったぞ。いいのか、今なら謝れば…」
みずき「おじいちゃんに二言目は通用しない。恐ろしいせっかんが待ってる。もうやるしかない…!」
堀江「…」
みずき「野球部を甲子園で優勝させてプロに入れるわよ!」
宇津「ふっ」
原「お供しますよ、みずきさん」
大京「同じく」
矢部「せ、生徒会メンバーでやんす!」
みずき「頑張ろうね、ダーリン♪」
理穂「ちょーーーっと待ちなさいよ!!」
みずき「きゃ!な、なによ」
理穂「あ、あのね!いきなりフィアンセだとかどういうことよ!」
みずき「仕方ないじゃない!野球部に入るにはこうするしかないんだから…って、あなたまさか…」
聖「理穂先輩は、おそらく」
理穂「わーわーわー!!」
みずき「ふーん…でも、私も堀江君いいかもーって思っちゃったし…」
堀江「お、おい!あれは口裏あわせじゃなかったのか?」
理穂「ど、どういうことよ堀江!!」
堀江「知るか!!」

ギャイギャイギャイ!!

矢部「いいでやんすねー、堀江君」
松尾「あー…」


みずき、宇津、原、大京が入部しました!

―――

七月

堀江「…で、どうするんだ」
みずき「ん?」
堀江「ん、じゃねーよ!」
みずき「決まってるじゃん、堀江君と私がプロに入ってそれっぽく卒業かな」
堀江「プロ野球選手だぞ、そんな簡単に入れるわけが…」
みずき「大丈夫よ、私たちが甲子園に出させてプロに入れてあげるわよ」
堀江「あのなぁ…甲子園にもそんなに簡単に行けないんだよ」
みずき「もーー!ごちゃごちゃうるさいなぁっ!百聞は一見にしかず!大京、宇津、原!いっちょ本気を見せてあげようじゃない!このわからんちんに!」
生徒会「…はい、みずきさん」


―――三十分後

堀江「…これは、驚いたな」
みずき「まあ、今まで私たちずっと大学の野球部で練習してたからね」
堀江「言うだけのことはあるな」
みずき「わかったっしょ、後おじいちゃんの前では必ずラブラブね」
堀江「それは同意しかねる」
みずき「キミにNOの選択肢はな、い、の。じゃ、ちょっと練習!愛してるよ、ダーリーン」
堀江「…気持ち悪いぞ」
みずき「ちゃんとやる!」
堀江「…ふー。……ん、んん。愛してるぞ、みずき」
みずき「…………」
堀江「…どうした」
みずき「お、OKよ」
堀江「勘弁してほしいな…」
みずき「も、もう一回言ってくれない?」
堀江「は?」
みずき「い、いやなんでもないわよ。そんな芝居はおいといて、あと足らないのはマネージャーね」

(ほーほほ)

みずき「この声は…」
麗菜「聞いたわよみずき!」
みずき「あ、邪魔くさいのが来た」
麗菜「あなたの彼氏って堀江さんらしいじゃないの?」
みずき「適当なうわさで来たなコイツ…」
みずき(…ん、そうだ)
麗菜「もう少し見る目あると思ったけど?」
みずき「ふふん、麗菜ってば堀江君のスゴさがわからないんだぁ」
麗菜「なんですって!?」
みずき「ま、彼氏がいない麗菜さんには無理だろうなぁ」
堀江「お、おい橘会長。俺はお前の…」
原「堀江さんはすごいんやで」
宇津「グレートさ」
大京「右に同じ」
麗菜「な、なんですって!?」
みずき「ほらね♪」
麗菜「は、はは。私もそう思っていましたわ」
みずき(もう一押し…)
みずき「あ、でも麗菜が野球部に入ったら堀江君をとられちゃうかも…」
麗菜(チャーンス!そうなれば橘みずきに勝ったことになる!)
麗菜「堀江さんを渡しませんわ!私は今から野球部のマネージャーになりますもの」
みずき「相変わらず単純だな…」
堀江「…どーなってるんだ、一体…」
矢部「理穂ちゃん、どーして怒ってるでやんす?」
理穂「知らないっ!!!」


―――――――

みずき「聖、待たせちゃったね」
聖「気にするな、みずき。でもこれでやっとみずきと野球ができるな」
みずき「そうね、アレを完成させるのにも聖の力が必要だし、よろしくね!」
聖「こちらこそよろしくな」



―――

堀江「なぁ、橘会長」
みずき「何よ、つれないわね。それにもう会長じゃないわよ。みずきって呼んでダーリン♪」
堀江「あのな、芝居じゃないのか。それより、もう会長じゃないって…」
みずき「ああ、生徒会ならやめたよ。じゃないと野球部できないじゃん」
堀江「やめたって、お前…じゃあ部のご要望会議とかどうするんだ」
みずき「あー、そうだねぇ」


―――
「おれは普通の生徒A!帰宅部だぜ〜!」
みずき「ねぇねぇ、そこのキミ!」
「ん?橘会長じゃないですか、なんでしょう?」
みずき「キミ帰宅部だよね、ちょうどいい。今日から生徒会はキミに任せた!!」
「ええ?俺はプライベート時間を…」
みずき「ほぉ、文句あるんだ?」
「ひぃ!やらせていただきます!」
みずき「んじゃよろしく〜ご要望会議は今日から始めてよ、じゃあね」
「ああ、俺のばら色の放課後ライフが…」


―――1時間後―――
(ピンポンパンポン)
『今日から会長になりました、座子田です…ご要望会議を開催します』


―――

みずき「まじめな人でよかったよ」
堀江「………お前の行動はたまに想像を絶するな」
みずき「どーいたしまして♪」
理穂「ちょっと、あんた達最近話すぎじゃない?」
麗菜「そうですわ!堀江君、さっさと練習を始めましょう」
堀江「やれやれ…」




――――


〜聖の実家(西満涙寺)〜
(ゴーーン)
聖「還ったぞ、ん?書置手紙?」
(すまないな、聖。また急な葬式が入ってな、悪いが一人でご飯済ましてくれ、父より)
聖「…一人、か」



――――

みずき「ついに来たわね、県大会!!」
矢部「みずきちゃんノリノリでやんす!」
聖「みずき、嬉しそうだな」
みずき「あったりまえじゃない!佳奈美!涼華!行くわよー!」
佳奈美「あ、待ってください、まだレギュラーの発表が…」
涼華「みずきは、落ち着いたほうがいいわね」
麗菜「あわてんぼうさんですわねぇ」
みずき「む…」

監督「あー静粛に、今からレギュラーを発表するぞ、じゃ堀江頼む」
堀江「またですか…」


一番 矢部 「でやんす!」
二番 星  「え、え、私ですかぁ…」
三番 原  「任しといてや!」
四番 大京 「はい」
五番 堀江 「…やれやれ」
六番 青山 「任してよ!!」
七番 山内 「わかったわ」
八番 六道 「わかった」
九番 橘  「OK−!!」

堀江「妥当だな」
みずき「よーっし!みんながんばるわよ!!」




またもや、一回戦で敗れてしまう。


みずき「あーん!なんでなんでー!ちょっと!原!大京!もっと打ちなさいよー!!」
原「す、すんません」
大京「失礼しました」
堀江「おい、なんで謝るんだお前ら」
原「え?」
みずき「あんたもよ堀江!」
堀江「俺は四打数四安打だ」
みずき「う…」
堀江「皆頑張ってるんだ、なぜ人のせいにする。お前だって打たれたろう?」
みずき「…それは…」
理穂「もう!いつまでも引きずってちゃ駄目よ!」
堀江「太鼓先輩は三年生だから今日で最後だったんだぞ」
太鼓「ほ、堀江君。ボクは別に…」
堀江「橘、お前一人の都合で試合をやるんなら、やめてもらっても結構だ」
みずき「う…わ、わかったわよ!やめてやるわよ!こんな部!」
原「ちょちょっと、みずきさん!堀江君!流石に言いすぎちゃうか!」
矢部「…堀江君」
堀江「原、大京フォロー頼んだぞ」
大京「え…?」
堀江「お前らは橘に優しくしてやってくれ。ただ甘えているだけではアイツは本来のピッチングはできないだろう。憎まれ役は俺がやる」
監督「堀江、お前…」
太鼓「…次のキャプテンは堀江で決まりだ」
堀江「太鼓先輩」
太鼓「ただ、橘一人のためにチームの和を乱すようなことは駄目だ。お前の責任で橘に謝って来い」
堀江「…」
原「と、とりあえずボクは行きます!」
大京「私も」
宇津「やれやれ、困ったお嬢さんだ」
堀江「ふぅ」



――――


二時間後、グラウンドに連れ戻されたみずき。
堀江「…」
みずき「なによ、私は悪くないもん」
堀江(泣いてたのか?)
原(みずきさん、他人にあんなにはっきり言われたことないから)
大京(…だが、堀江の言うことも正しいです)
宇津(ま、躾を誰がするか、ってことだろ)
堀江「…お前は悪くない」
みずき「へ?」
堀江「お前は最高のピッチングをしたよ、だけど誰も悪くない」
みずき「…」
堀江「それを、人のせいにしちゃ、いけない」
みずき「それは…」
堀江「だろ?」
みずき「……………うん」

麗菜(み、見ましたか!?)
聖(驚いたな、みずきがあんなに素直になるとは)
理穂(何よ堀江の奴、格好つけちゃって)

みずき「わかった、私も悪かったよ…ごめん堀江くん」
堀江「いや、わかってくれたならいい。次の試合に向けて、頑張るべきだ」

原「ふーん…」
宇津「少し見直したかな、彼を」


――――


九月


〜聖の実家(西満涙寺)〜
(ゴーーン)
(チュン、チュン)

父「聖、今日は檀家さんの家を回るから遅くなるよ」
聖「そうか、わかった」
父「すまんな、じゃあ先に出るよ」
聖「気にするな、いってらっしゃい」
(バタン)
聖「…」


〜放課後ですぅ〜

堀江「やれやれ」
矢部「やっと授業が終わったでやんす!」
理穂「さー部活行くわよ!堀江!メガネ!」
みずき「あ、堀江くん、ちょっといい?」
理穂「むむ!」
堀江「なんだ、橘。俺に何か用か?」
みずき「ちょっと、その練習後つきあってよ」
堀江「はぁ?」
みずき「いい?わかった?それじゃ、部活でね!」

矢部「ものすごい目をしてるでやんすが」
理穂「知らないっ!!」


―――部活後なのだわ―――

堀江「練習終了だ、お疲れ。それじゃあな」
みずき「待ってってば!忘れたの!?」
堀江「…覚えてたか」
みずき「当たり前よ!」
(ガチャ)
聖「先輩、お疲れだ」
堀江「ああ、六道。お疲れ」


―――
(スタスタ)

みずき「ちょっと!早く早く!」
堀江「おい待て!手を引っ張るな!」
矢部「みずきちゃん早いでやんす〜」
理穂「ちょっとはゆっくり歩いたらどうなのよ〜!」
佳奈美「ま、待ってください〜!」
宇津「みずきさんはいつもこうだよ」
涼華「ずいぶんと、せっかちなのね」
原「ま、しゃーないやろみずきさんやし」
大京「うむ」


聖「あれは…先輩たちだ…いや、私には関係ないことだ」



〜聖の実家(西満涙寺)〜
(ゴーーン)

しーん…。
聖(そうか、父は檀家回りだったな。…ま、毎度のことだ、いないのは慣れている)
しーん…。
聖「…そうか、今年は…」

(聖…)
聖「え?」
(わしじゃよ、聖)
聖「ぶ、仏像がしゃべってるぞ!?」
(何を悲しんでおるんじゃ)
聖「別に悲しんでなど無い」
(お前本当は、誕生日を祝ってもらいたいんじゃないのか?)
聖「へ?ど、どうしてそれを…」
(私は神じゃ、なんでもしっとるよ)
聖(…ほ、仏じゃないのか?)
聖「昔からお父さんは忙しくて、私の誕生日なんかきっと覚えてない」
(そうかな?お父さんはお前の誕生日など忘れてはおらんよ)
聖「え…?」
(それが証拠に…)


みずき「わったしたちがここにいるじゃん!」
聖「!?みずき?!な、なぜここに」
堀江「よぉ、六道」
理穂「こんばんわ、聖ちゃん」
佳奈美「すごい…」
涼華「へぇ、ずいぶん大きいのね」
矢部「こんちゃーでやんす!」
宇津「へぇ、ずいぶんと趣がある家だね」
原「すごいなー外鐘あったで、鐘!」
大京「原、もう少し静かにしろ…」

堀江「ま、檀家が橘の家だった訳さ」
理穂「だから、夕方で終了〜」
みずき「あとは明日ってことでね、もちろんおじいちゃんもOKだって」
聖「ということは…」
堀江「お前の親父さんは、もうすぐ帰ってくるよ」
佳奈美「み、みんなで聖さんのお誕生日を祝いましょう、です…」
矢部「ま、そういうことでやんす」
みずき「聖はケーキよりおまんじゅうだよね〜」
矢部「オイラたちみんなで一人一箱限定のパワ堂のきんつばを皆で並んでたくさん買ってきたでやんす!」
聖「…もう、私はそんなに食べないぞ」

バタン。

父「今帰ったぞー聖。ん!?おお、みなさんいらっしゃい」
聖「お父さん」
父「すまないな、お前には子供のころからさびしい思いをさせてしまって…」
聖「そんなことはない」
父「今日は去年の分を祝うためにお前の好きなパワ堂のきんつばたくさん買ってきたぞ」
聖「お、お父さん、ちょっと…」
全員「ははははは」

みずき「ねえ、聖。みんな聖のこと大好きなんだよ」
堀江「お前は、非常に幸運だ」
理穂「私たちにいろいろ教えてよ、聖ちゃんのことをさ!」
佳奈美「そうです…!」
涼華「それよりも始めよう、私もきんつばを食べたいのよ」
「ははははは」

『お誕生日おめでとー!!聖ちゃん!!』
(パン!パパパーンッ!!)

聖「…ありがとう」
堀江(…笑うと、案外可愛いのにな)
理穂「なに、じーっと見てるのかしら」
堀江「気のせいだ」




十月

みずき「試合よ!!」
堀江「ま、試合は省略されるだろう」
宇津「いいのか…?(汗)」


―――

みずき「いやっほうう!!!!」
理穂「地区大会への切符を手に入れたわーー!!」
矢部「やったでやんすぅうううう!!!」
堀江(…順調に全員のレベルが上がってきている…これはもしかすると、もしかするかもな)


十一月

地区大会も省略


みずき「勝ったのに、なんかねぇ…」


―――

聖「あ、あの、ほ、堀江先輩」
堀江「うん?なんだ、六道か、どうした」
聖「先刻、調理実習があっておはぎを作ったんだが、少々作りすぎたんだ…よ、よかったらもらってくれないか?」
堀江「いいのか?…って、なんだこの数は…」
聖「「いや、その、っき作りすぎたと言ったはずだが?」
堀江「多すぎる…」
聖「あ…いらないなら、いいんだ。他をあたる」
堀江「…やれやれ。おい!青山、矢部!橘!松尾!市川!星!山内!三条院!後輩がおやつ作ってきてくれたぞ!」
聖「せ、先輩?」
理穂「ん?あー本当だ!」
みずき「おはぎかー、聖本当和菓子好きねぇ」
矢部「おいらももらっていいんでやんすか!?」
松尾「おお!超うまそーだな!」
市川「料理、上手なんですね〜」
佳奈美「本当だ…おいしそうです」
涼華「意外…でもないかな」
麗菜「みずき!どっちが先に食べきるか勝負ですわ!」
みずき「みんなで分け合おうって話でしょうが…」

聖「み、みなさん、どうぞ」
堀江「何を照れてるんだ…ん、おお、美味いじゃないか」
矢部「本当でやんすか?…おおおお!マイウーでやんす!」
理穂「あ、本当!すごーい!」
佳奈美「もふもふ…おいしいですぅ」
松尾「すっげー!一人一個?一個?」
みずき「ここはじゃんけんにでいきましょうよ!」

聖「…よかった」



――――

みずき「いいか、お前たち!この試合に勝てば甲子園にいけるのよ!」
監督「それ、俺の台詞…」
堀江「なんだその口調は」
みずき「いいこと!ファイトなのよ!」
『オオオオオ!!!』


試合は、省略で。


矢部「勝ったでやんすぅううう!!」
堀江「ま、順当な勝利だな。それだけ、今のウチは強い」
みずき「なーに格好つけてんのよ!あんたも喜びなさいってば!」
理穂「そうよそうよ!」
堀江「あのな、まだ甲子園出場が決まったわけじゃないだろうが」
松尾「え?そうなの?」
原「あ、そうか、確か本部から通知が来ないとあかんかってんなー」
大京「しかし、この成績ならば大丈夫でしょう」
堀江「ま、そう願いたいところだな」


――――

堀江「やれやれ…」
麗菜「あ、堀江さん、今日もお疲れですわ」
堀江「文字通り疲れる奴らを相手にしてるんでな」
(キュッキュッ)
堀江「ボール磨き、か?」
麗菜「結構量が多くて大変ですの」

(スッ)

堀江「…手伝おうか、一人じゃ大変だろ」
麗菜「へ?」
堀江「何ぼけっとしてんだ、俺にもボール貸せ」
麗菜「あ、う、うん…」
堀江「どうしたんだ、急に」
麗菜「え、ち、違うんですの、堀江君がまさか手伝ってくれるとは」
堀江「どういう意味だそれは」
麗菜「…意外と優しいんですのね」
堀江「お前らは俺をどういう風に思ってるんだ」
麗菜「…みずきの彼氏には、もったいないですわ」
堀江「…あのな、誤解してるかもしれんが、あれは橘が野球部に入るための演技だぞ」
麗菜「へ?そ、そうなんですの?」
堀江「当たり前だろうが、なんで橘が俺みたいな奴とつきあうんだ。おかしいだろ冷静に考えて」
麗菜「そうですか?案外お似合いだと思いましたけど…」
堀江「あのな」
麗菜「ふーん…なるほど、そういうことでしたの」
堀江「お、おいなぜ近づいてくる」
麗菜「チャンスは、なきにしもあらず、ってところかしら?」
堀江「……なんだその目は。…と、これで終わりか、案外早かったな」
麗菜「あ、あら?もう終わったんですの?」
堀江「じゃ、片付けて帰るか…お前も暗くならないうちに帰れよ」

麗菜「…不完全燃焼ですの」


――――


一月

監督「今日は春の甲子園に出られるかどうかの発表の日だ」
全員「おおーー!」
聖「ついに、だなみずき」
みずき「そうね…ま、呼ばれると思うんだけど」
大京「大丈夫でしょう、みずきさん」
原「そやな、自信持って行こうぜ」
佳奈美「だ、大丈夫でしょうか、堀江さん」
堀江「さぁな」
涼華「相変わらず、お澄ましさんね」
理穂「あんたねぇ…せっかくの舞台なんだからもうちょっと調子あげなさいよ」
矢部「みんなー、監督室に集合でやんすよー」

―――

『…ふむ、ありがとうございます』
監督「おめでとう、みんな、甲子園出場、決定だ!!」
全員「おおおおお!!!!」
矢部「やったーでやんす!!!」
聖「メガネ先輩!やったな!」
理穂「ちょっとちょっとー!嘘みたいじゃない!?」
みずき「ほらいけるっていったでしょーー!」
原「よっしゃーーーー!!」
宇津「ふっ…甲子園に薔薇が咲く日も近い」
大京「良かったですね!」
佳奈美「うわーん」
涼華「ちょっとちょっと、佳奈美、泣くのが早いわよ」
松尾「ついにか…甲子園、まさかいけるとは思ってへんかったな」
堀江「…ここからだろうが」



三月


―――甲子園に到着

理穂「うわ!すごいすごい!これテレビで見たことあるよ!!」
松尾「スッゲー広いなー!」
佳奈美「人が…たくさん」
聖「大丈夫か佳奈美先輩」
麗菜「流石の私も雰囲気に圧倒されてしまいしたわ…」
みずき「ねぇねぇ、だーりん、早く早くぅー」
理穂「ちょ、ちょっと橘さん、それ…」
堀江(今学長が一緒に視察しにきてるんだよ、口裏あわせだ)
理穂(それはわかってるんだけど…なんだか、みずきちゃん嬉しそうなのよね…)


―――

一回戦を突破!!
その調子で聖タチバナはなんと決勝に!!

―――

堀江「ここまで、来たか…」
みずき「そうね…」
理穂「うん…」
原「ここまできたら」
松尾「勝つしかねーだろうが…!」

ピュー。

矢部「お、春一番でやんす」
みずき「きゃっ!!」
理穂「やーん!なにこの風ー!」
佳奈美「ふあ…!」
涼華「ちょ、ちょっと…!」
麗菜「いやーんですわ!」
堀江「…何してるんだ、行くぞ」
女子陣(きょ、興味なしですかーーー!!)


――――


甲子園優勝


松尾「すげえあっさりーーー!!!」
市川「や、やりましたーーー!」
みずき「いやっほーーーー!!」
聖「か、勝ったぞ先輩!」
矢部「やったでやんす!!!」
宇津「信じれば…願うものだな!!」
原「大京ぉーーーーー!!!」
大京「か、勝ちました、勝ちましたよみずきさん!」
理穂「や、やったね堀江!!!」
佳奈美「すごいですぅ…!!」
涼華「こんなことも、あるものなのね!!」


堀江(ま、まさか勝ってしまうとは…)



校歌斉唱ーーー

堀江「…校歌歌いたくないんだが」
矢部「ぶっちゃけるでやんす!」
聖「それがミソだな」





*三年生

堀江「ついに俺たちも三年生か…」
矢部「いろいろあったでやんすねぇ」

理穂「ちょっと!みずき!!アンタ私のマドレーヌ食べたでしょ!」
みずき「さぁーてねぇ、知らないよー」
聖「まぁまぁ、ここに私が作ったおはぎがある、これでなんとか」
佳奈美「わぁ、おいしそう」
松尾「お前相変わらず量多いなー!」
石田「一つもらうぜっ」
武田「もらうでごわすー!」
市川「あっあっ、どんどん減っていく…」
涼華「食い意地はってるわねぇ、貴方たち」
麗菜「みずき!どちらが多く食べれるか勝負ですわ!」
原「またかー麗菜ちゃん、こりへんなぁ」
大京「勝つのはみずきさんですよ」
宇津「ふっ、その通りだな」


堀江「…ずいぶんと個性的なメンバーが集まったな」
矢部「そうでやんすね…」
堀江「春夏連覇か…やれるものなら…。いや、このメンツなら、きっと…」


――――

五月

(ビュンッ)
(ククッ)
(バシィーッ)

堀江「あれは…橘と六道か。何をしているんだ?」
大京「おっと、邪魔をしてはいけません」
堀江「邪魔?」
大京「みずきさん達は新変化球の開発中です」
堀江「ほぉ…またそれはそれは、熱心なことで」


みずき「いくわよ!クレッセントムーン!」
聖「うむ、来いみずき!」

堀江「…また妙な名前だな」
大京「解説しよう」
堀江「…大京?」
大京「クレッセントムーンとは別名クロスファイヤー高速スクリュー。ベース左端から独自のサイドスローで投げ出される高速スクリューはバッターから通常のスクリューの数倍の変化に見える魔球だ」
堀江「…はぁ」
大京「しかし、それには大きな弱点がある」

(ビュンッ!!)
(ククッ!!)
(カスッ!!)

聖「く…っ!」


堀江「あの六道が、後逸、か」
大京「悲しいかな、捕れるキャッチャーが高校レベルじゃほぼいない…」
堀江「なるほど、幻の魔球か」



聖「すまない、みずき」
みずき「やっぱり厳しいか…」
聖「くっ…私の力不足のせいで」
みずき「気にしないで、聖は頑張ってるよ、今日はこれでおしまいにしよう」


―――

みずき「ふむ…」
堀江「どうした橘。家にまっすぐ帰らずに川原でぼんやりとは、お前のキャラじゃないだろう」
みずき「どーいう意味よ」
堀江「ま、いいさ…。それでも、無茶だな。あの球を捕るなんて、いくら六道でも…」
みずき「聖の力はあんなものじゃないのよ」
堀江「…ずいぶんと買ってるんだな」
みずき「わたしが聖をタチバナに呼んだのはこの球を捕れる数少ない捕手と確信したからなの」
堀江「どういうことだ…?」



―――みずき高校一年の夏―――

みずき「…中学野球部まわりも楽じゃないわね。まぁ、これで来年は部員が増えるから私の野球部復帰体制はバッチリね…ん?」

(ビュ・・・カーン!)
みずき「お、河川敷球場で中学生が野球やってるじゃん。ランナー満塁のピンチかぁ」

(ズバーンッ!)
『ストライクッ!』

みずき「ん?もしかしてキャッチャー女の子?」

(ビュッ!)

「し、しまった!!手が滑った…!」

みずき「あちゃー、最悪。ワイルドピッチで失点かな」

「六道!!」
聖「…」

(ビューン)
(キュイーン!)
(バシーッ!!)

みずき「…う、うそ!あの大暴投に反応!?しかも捕っちゃうし…すごい集中力と反射神経…見つけた」


―――

ストライクバッターアウト!!
ゲームセット!!

「やったー!聖はすげーな!」
「お前のおかげで中学地区大会を優勝で締めくくれたよ」
聖「私は、当然の仕事をしたまでだ」
「相変わらずだな、聖」
「でも、残念だ。高校に入って聖と甲子園を目指したかったんだが…この地区の高校は女子野球部員は駄目なところばっかりだったんだよなあ」
聖「気にするな。私はお父さんを置いてはいけない。お前は自分の道をいけばいい」
「そっか…残念だな。お前を目標にしていたんだけどな。じゃあな、お前の分も頑張るよ」
聖「甲子園か…」

―――――

(スタスタ)
みずき「ちょい待った!」
聖「誰だお前は?」
みずき「私は、橘みずき。話は聞いたわよ、あなた野球ができる学校に入らないの?」
聖「私は音成女学院に進学が決まっている。野球は今日で最後だ」
みずき「ねぇ、聖タチバナ学園に来ない?貴方の力が私には必要なの」
聖「私の力が、か?」



――――現在――――

堀江「そんなことが、ね」
みずき「中学の試合で見せた超集中力が出せれば、きっとクレッセントムーンを捕れると思うんだけど…」
堀江「そんな便利なものがあると思ってるのか?」
みずき「…そうよね、アレ以来何度練習しても、聖、アレを出せないみたいなのよ」
堀江「…超集中力ねぇ…いや、待てよ。あれか?あの目がくわっと、開いて、まるで動かなくなった後に打球にすごい反応する…」
みずき「それよ!ど、どうしてそれ知ってるの?」
堀江「いや、六道と一緒に守備練習するときたまに、見れるんだが…」
みずき「う、嘘」
堀江「さぁな、俺は実際がどんなものなのかわからないし」
みずき「ふーん…ということは…ははーん。…そういうことか」


――――

みずき「今日も新変化球の特訓よ!!」
聖「…すまん、みずき。私には…無理だ。今日は帰る」
みずき「…そう、わかった」

理穂「あら?聖ちゃんもう帰るの?」
佳奈美「最近…練習さぼり気味です…」
涼華「何かあったのかしらね、堀江君、知らない?」
堀江「さぁな、それはあいつの都合だ」

みずき「…しょうがない、そろそろかな」

―――

堀江「お疲れ」
松尾「おう!お疲れー!」
矢部「お疲れでやんすー!」

(ガチャ)

みずき「堀江くーん♪」
堀江「…」
みずき「だから無視しないでってば!」
堀江「なんだよ、俺は帰るんだ。邪魔するな」
みずき「いいから、着いてきなさいっ!」
堀江「だから、だな手を、引っ張るな!わかった、わかったから!袖が伸びる!!」


理穂「…」
佳奈美「最近、堀江君みずきちゃんと仲、いいです…」
涼華「そういえばそうねぇ」
麗菜「何かあったのかしら?」
涼華「でも、つきあっている、っていうのは演技なんでしょ?」
佳奈美「でも…みずきさんの目はきっと…」
理穂「堀江…」



――――――――

聖(私では…駄目だ、すまない、みずき…はぁ)
(とことこ)
聖「所詮高校レベルでは、通用しないのか…」

みずき「やっぱり、ここのグラウンドにいたんだ」

聖「み、みずき!?」
みずき「そんな気がしたの、ここは聖と私が始めて出会った場所だったからね…」
聖「そうだったな…」
みずき「ねぇ、教えてあげようか?超集中のやりかた」
聖「へ…?」
みずき「ほら、ミット」

――――

聖「何をするんだ?」
みずき「いい?一回しか投げないよ、今ここで新変化球を特訓するの」
聖「あれは…私では無理だと言ったはずだ」
みずき「いいのかな、そんなこと言って?後ろを見てみなよ」
聖「うしろ・・・?」

ホームベースのさらに後ろのほうにあった、巨大な布をかぶった箱。
その布が生徒会メンバーによってはがされる。

堀江「きっさまら!!!許さんぞ!!!」
宇津「悪いなー堀江」
原「みずきさんの命令は」
大京「絶対なのです…南無」

聖「なっ、なっ、堀江先輩が逆さはりつけに!?」

堀江「オラァ!!橘!!テメェ特訓の協力だって言ったろうが!!!」

宇津「うわ…キレてるね。まさに頭に血が上っているとはこのことだ」
原「か、開放したくないなぁ…」
大京「いっせいに逃げましょう、開放した後は」

聖「ほ、堀江先輩…度、どうして、あ、いや、その、ひぃぃ…」
みずき「友情出演してもらいました」

堀江「ふざけんなこのクソアマ!!ぶっ殺してやる!!」

聖「ひ、ひぃぃ…」
みずき(う…しまった、あんなに怒るとは…後が怖いわね…)
聖「せ、先輩、今解放する…」
みずき「ちょーっと待った、私は、投げるって言ったでしょ」
聖「み、みずき!?」
みずき「球を後逸したら、聖のお尻の堀江君に直撃よ」

堀江「うるせぇ!!ほどきやがれ!!」

聖「みずき無茶だ、堀江先輩が死ぬぞ!」
みずき「捕れば問題ないよ…行くよ、クレッセントムーン!」

(ビューン!)

聖(だ、駄目だ!!)
みずき「逃げちゃ駄目よ!あなたはあの子の目標なんでしょ!」

堀江「ぐ…なんとかして避けないと…顔面コースだぞ!」

(ギュウウーンッ!)
聖「わ、私には無理だ!」


―――聖はすげーなー…―――

聖「…!」

(キュイーンッ!)
(パシィィィィ!)

みずき「捕った…やったね聖!クレッセントムーン完成だ!」
聖「と、捕れた…」
みずき「あなたは、土壇場でその能力を発揮するのよ」
聖「土壇場…」
みずき「あと、大切な守りたい人がいる時とかね」
聖「へ?」
みずき(ねぇ、堀江くんって、似てるのよね、あの子に)
聖(な、ななななな!ど、どーしてそれを!みずき!?)
みずき「まあ、堀江君の協力もあって、一件落着ってとこかな?」
聖「…あ、ああ」
みずき「いいわよ!貴方たち、堀江君の紐とってあげてー!」

宇津「…」
原「…いくで」
大京「GO!!」


バサッ!!

みずき「あ、ちょっと、あんたたちどこに行くのよ!」
聖「み…み、みずき、ま、前!」
みずき「へ…」

堀江「さぁて、おんなじ罰がいいかな」


―――――――

みずき「ちょっとーー!何すんのよ!!!」
堀江「罰だ」
聖「そ、それでもこれはやりすぎでは…」
堀江「大丈夫だ、晩飯の時間には返してやる」
聖「で、でも…」
みずき「出しなさい堀江!!」
聖「…倉庫の中に閉じ込めると言うのは…」
堀江「軽い方だ。それとも、あの場でボコボコにしたほうが良かったか?」
聖「い、いえ!全然マシだと思います!」
堀江「賢明だな」
みずき「やーん!暗いよー!怖いよー!出してーーー!」
堀江「反省だ。誰にたてついたら駄目か、頭と体に覚えさせる」
聖「…ひぃい…」

堀江「それより、捕れてよかったな、あのボール」
聖「え?あ、ああ、はい」
堀江「諦めた、はずだろ?あの一瞬。どうして捕る気になったんだ?」
聖「それは…その、先輩にあたっちゃいけない、と」
堀江「そうかよ」
聖「…すまない堀江先輩。みずき、私は、あきらめていた。…だが、私は強くなければいけない。あきらめちゃいけない」
堀江「そうだな、俺も自信にあふれてる聖の方が情けないお前よりよほど好きだ」
聖「な!??!!??!え。えと、す、すすすす、好き…そ、それはどういう…」
堀江「しかし、お前ら自分を客観的に見る練習をしたほうがいい」
聖「へ?」
みずき「出してよー!!」
堀江「二人とも制服で野球するから、目のやり場に困るだろうが」
聖「………やはり、先輩はあいつには似ていない」
堀江「は?」
聖「…もっと、いや、なんでもない」
みずき「出してってばーーー!!」
聖(好き…か、私は、何を考えているのだ…馬鹿馬鹿しい………ふにゅぅ)

――――――――


堀江「なあ、お前ら、どうしてみずきにそんなに従ってるんだ?」
原「へ?」
宇津「どうした藪から棒に…」
堀江「あのわがままに、つきあうのも大変だろ」
大京「…いや、そうでもないんだ」
原「そーやなぁ」
宇津「ふふ、思い出すな」

原「チビでひ弱な中学のボクに…」
みずき(一緒に野球しよう!小さくたってヒーローに慣れるよ!)

宇津「歌手になりたかったのに、声が出なかった俺に」
みずき(一緒に野球しない?肺活量もスタミナもつくよ!)

大京「中学のとき、ブヨブヨに太って格好割る方私に…」
みずき(一緒に野球しよう!パワーあるんだから筋肉つければ、かっこうよくなるよ!)

堀江「そんなことが、ね」
宇津「…彼女は俺たちに希望をくれたのさ」
原「だから、ボクらは彼女に恩返しせなあかんねん」
大京「うむ」

(ガチャ)

みずき「あら?どしたの四人で仲良く」
宇津「いや…行こうか」
原「そやな!行くぞ堀江!」
大京「ファイトぉお!!」
堀江「ちょっと待て、俺は別に橘にだな…」

みずき「どうしたんだろ?やけに仲良くなってるわね」
聖「男同士の友情というものだろう、私にはわからない」
理穂「そんなものかなぁ」


―――――――



七月


(ビュンッ!!)
(バシィッ!!)
みずき「うーん…うまくいかないわね」
理穂「なんだか機嫌悪いわね、みずきの奴」
麗菜「そうですわねぇ…」
堀江「腹でも痛いんじゃないのか?」
理穂「相変わらずデリカシーないわね!アンタは!」

宇津「もうすぐ県大会だから、気合も入ってるんだろう」
原「そやな…ボクらにとっても、最後の大会やもんな…」
大京「うむ」
松尾「長いようで短かったな」
市川「そうですね…」
監督「おいおいお前ら、しんみりするにはまだ早いんじゃないのか?」
聖「監督!」

監督「夏の大会、レギュラーを発表するぞ…三年生にとってはこれが最後だ。ぜひ頑張ってくれ」

『はいっ!!』


理穂(これが、最後、か…)


――――――

県大会は省略!


―――――

みずき「やった!やったやった!!」
矢部「二年連続甲子園出場でやんすーーー!!」
原「いよっしゃあああ!!」
松尾「やったぜ堀江!」
石田「俺たちこれで本物じゃねーか!?」
堀江「まぁまぁ。ってとこだな」
佳奈美「や、やりましたよー涼華さん、理穂さん!」
涼華「こらこら、泣くな佳奈美」
理穂「そうだよ、まだここからなんだから…!」


八月



――――そして、俺たちは、甲子園決勝への切符を手に入れた。

理穂「甲子園決勝、か。これで私たちの高校野球も終わりなんだね…」
涼華「まさか、こんなところまでこれると思ってなかったわ」
佳奈美「これも…堀江君のおかげ」
涼華「そうねぇ、なんだかんだ言っても堀江君がチームをまとめあげてくれたもんねぇ」
理穂「堀江かぁ…」
聖「堀江先輩は、偉大な人だ。私は人生において、父の次に尊敬している」
みずき「なによー、揃いも揃って堀江のことばっかほめちゃって、甲子園にこれたのはこのみずきさまの力もあるんだからねー」
佳奈美「わかってますよ、みずきちゃん」
涼華「そんなに妬かないの」
麗菜「見苦しいですわ〜」
みずき「も〜…」
理穂(……明日が、最後、か)


――――

堀江「…なんだよ青山、こんなところに呼び出して」
理穂「…」
堀江「明日は決勝だ、早く寝て英気を養うべきだな」
理穂「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
堀江「なんだ…」
理穂「あ、あのさ!…その、ウチにはそのさ、可愛い子多いじゃない?聖ちゃんとか、みずきちゃんとか、佳奈美に、涼華に、麗菜って…女の子多いしさ」
堀江「だからどうした」
理穂「あ、あんたその、い、今好きな子とか、いる?
堀江「ん?」
理穂「いるのか、いないのか!って聞いてるのよ!」
堀江「…いないが」
理穂「そ、そうなんだ…へぇー」
堀江「疲れてるんだ、寝させてくれ」
理穂「ちょ、ちょっと待ってよ」
堀江「悪いな。決勝の後、聞く」


理穂「わ、私あんたのことが、好きなのよっ!!!」

堀江「…は?」
理穂(し、しまった!つ、つい言っちゃった…)
堀江「…そ、そうか。いや、その、だな」
理穂「こ、ここ答えは決勝の後でいいから!おやすみ!!」
堀江「………青山」

――――

そして、翌日の朝。

みずき「あれ?堀江、どしたの?こんなに朝早くから」
堀江「…あ、いや、いろいろとな」
みずき「ふーん…そうなんだ、私も今朝早く緊張しちゃってさ、ガラじゃないよね、あはは」
堀江「そうだな…お前は堂々としてくれないと困る」
みずき「…うん」
堀江「……」
みずき「…」
堀江(な、なんだこの空気は…)
みずき「これ、良かったら、つけてくれない?」
堀江「ん…これは?」
みずき「ペンダントよ。プロ入りのご利益がありますように、って」
堀江「プロ入りか…そういえば、お前との約束もそれまでだったな」
みずき「…そうね、プロ入りするのが私が野球部に入る条件だったもんね」
堀江「…待てよ、おいお前もし俺がプロに入ったら…」
みずき「私と、結婚する?」
堀江「お、おい…橘」
みずき「私…別に、堀江となら嫌じゃないよ」
堀江「お、お前何を言って…」
みずき「その、ペンダント。ちっちゃいころにおねえちゃんと一緒に買い物に言ったとき買ったの。いつか、好きな人ができたら、私もこのペンダントをあげる、って」
堀江「お、おいおい、橘?」
みずき「…迷惑、かな?」
堀江「…いや、その、なんだ」
みずき「いいよ、答えは…試合の後で。それじゃ、また後で会おう、ばいばい」
堀江「お、おい!橘!!…ふぅ…どうしたってんだ」


―――――――

堀江(ぼけー…)
矢部「そろそろ試合に行くでやんすよ堀江君」
松尾「なーにボケーっとしてんだお前は!」
原「そうやで!これから決勝やのに!気合いれんかい!」
大京「気合注入、筋肉つぶし」
堀江「うぎゃああ!」
宇津「気合、入るなーそりゃ」
市川「堀江さん、寝てないんですか?」
堀江「…まぁな」
武田「堀江君が緊張なんて、らしくないでごわす」
原「ほんまやで、なんかあったんか?」
堀江「…いや、まぁ、いい。なんとかなるだろ、それは、俺の都合じゃない」

堀江(しかし、俺の気持ちは…?)




―――

矢部「決勝の相手は、パワフル高校でやんす」
橘「強そうな高校ね…堀江」
堀江「あ、ああそうだな」
理穂「なによ、ぼーっとしてシャキっとしなさいよ!」
堀江(誰のせいだと…)
聖「…向こうのあのバッター…」
佳奈美「どうしたの、聖ちゃん…?」
聖「…先輩、私たちも、負けられない」
橘(…ふーん、そういうこと、か)
堀江「…ちっ、まぁいい、あーだこーだ考えるのはやめだ。皆、勝つぞ。なんでもいい、勝つぞ、そのために、俺たちは戦う!!」

『オオオオオ!!!』


――――試合は省略


みずき「優勝よ!優勝よーー!!」
矢部「やったでやんす!やったでやんす!」
堀江(まさか…なぁ、こんなにうまくいくとは…)
聖「先輩!!やったぞ!!私はとても嬉しい!!」
理穂「やったね!堀江!!」
松尾「お前のおかげだぜ!!!」
市川「や、やりましたよーーー!!」
大京「…素晴らしい」
宇津「みずきさん、嬉しそうだぜ」
原「よっしゃ!!みんな!校歌斉唱や!!」

堀江(嫌だなぁ…校歌)


――――――


「負けた…か」
聖「…おい!」
「聖…驚いたよ、野球続けてたんだな、相変わらずすごいや」
聖「もう一度お前と野球アしたくて、私は強くなった」
「俺もさ…同じチームも良かったが、敵チームでも野球は面白いな」
聖「ああ」
「また…やろうな」
聖「…必ずだぞ!絶対また会うぞ!!」
「でも、聖の目はもう俺意外に向いてるみたいだけどな」
聖「は…?」
「見てればわかるよ、聖、お前のチームのキャプテンのこと…」
聖「な、何を馬鹿な!私は…」
「じゃあな、みずき!ライバル多そうだから気をつけろよー!」
聖「お、おい!待て、わ、私は…私は…堀江先輩のことを…」


みずき「よかったね、聖。私もインタビューに参加しようっと」

――――――

決勝後、旅館に帰った皆は、全てを放り投げて皆は倒れるように眠り落ちた。
体力が限界だったのだろう…ただ一人を除いては。


〜旅館、ロビー〜

堀江「はぁ…重いな。優勝したってのに、ちっとも嬉しくねぇ。いっそケガでもすればよかったか」
頭痛の種の原因は二人仲良く、女子部屋でダウンだ。
堀江「…選ぶ、ねぇ」
正直今まで、女なんて見ていて見ていないようなものだ。
麗菜「あら?!堀江君」
堀江「…ん、三条院か?」
麗菜「…大丈夫なんですの?皆さん部屋でばたんきゅーですのに」
堀江「鍛え方が違うんでな」
麗菜「でも、昨夜寝てらっしゃらないんでしょう?」
堀江「…知ってるのか?」
麗菜「それは…まぁ、今朝も大変でしたみたいですし」
堀江「お、お前見てたのか!?」
麗菜「モテモテですわね、堀江君」
堀江「あ、あのな…じゃ、なかった…三条院。俺はどうすればいい?」
麗菜「あら?私に聞くんですの?私だって堀江君のこと、嫌いじゃありませんことよ?」
堀江「…は?」
麗菜「うふふ、なんですかその顔は。でも、あの三人に比べたら私はまだまだですの。今回はゆずってあげますわ」
堀江「……ちょっと、待て。三人って…」

聖「ほ、堀江先輩!は、話が…?あれ?麗菜先輩」
堀江「……………」
麗菜「うふふ、お邪魔虫は退散しますわ〜」
聖「あ、麗菜先輩…ま、まあいい。先輩!話がある!」
堀江「なんだ、キャプテン就任か、お前がやれ。お前なら…」
聖「ち、違う!そ、その、だな!しょ、将来ウチの寺を継ぐ気はないか!?」
堀江「はい?」
聖「わ、私は、その、こういうことは経験がないんだ!だから、ど、どうすればいいかわからない。だから、その私とだな、結婚を前提に…」
堀江「ま、まてまて!話がややこしくなってるぞ!」

理穂「ふあ…おはよう…ってあれ?堀江おきてたの?」
聖「り、理穂先輩!」
堀江(お、おかしなことになってきたぞ…)
みずき「堀江!答え決まった!?…って、あれ?どして二人が?」
聖「みずきこそさっき寝てたじゃないか」
みずき「今起きたのよ!もうだって夜の十時よ」
理穂「…あのさ、堀江、答えってどういうこと?」
堀江「え?あ、いや」
みずき「決まってるじゃない!私と結婚して橘家を継ぐかどうかよ!」
二人「えええええ!!!」
聖「そ、そうなんですか!?堀江先輩!」
堀江「ま、まて橘!」
みずき「私、意外と本気なんだから!こんな気が合う奴そう会えると思わないし!」
理穂「ちょ、ちょっと待ってよ!なんだか嫌な予感がするんだけど…!」


麗菜「……四角関係?」



堀江「―――じょ、冗談じゃないぞ!」
理穂「アンタが早く決めれば何も問題はないでしょうが!」
堀江「お、俺のせいか!?俺のせいなのか!?」
みずき「お金、使い放題よ!」
聖「ま、毎日おはぎを作ってやる!」
理穂「は、裸エプロンとか…」
みずき「理穂!あんた色仕掛けは卑怯よ!」
聖「そうだぞ!わたしは毎日はいていなくてもだな」
理穂「ちょ、ちょっと!!それやばくない!?」

堀江「…………転校したいなぁ」



―――

十一月

理穂「結局うやむやのまま、ドラフトの日かぁ…あんた、みずきのおじいちゃんとの約束どーするのよ。みずきと…結婚するの?」
堀江「アホか!俺はまだ18だぞ!」
理穂「…できるじゃん。プロ入りもほぼ確定だし、将来の予定もあるし…」
堀江「…あのな。そんな風に外からの理由で俺の将来を決めて欲しくない。・・・それは俺以外の奴の都合だ」

(ガチャ!!)

聖「先輩!ドラフト始まりましたよ!!」

(ガチャ!)

宇都宮「つーか!先輩一位指名ッスよ、パワフルズ」

堀江「…は?い、一位!?」
理穂「う、うっそー!!!やったじゃない!堀江!!!」

(ガチャ!)

松尾「おいおい!橘も矢部も、青山も指名だぞ!?」
監督「す、すごいぞ!ウチから四人もプロが出るだなんて!!」
理穂「えええええ!?私も!?」
堀江「…馬鹿げてる」
市川「みずきさんは、キャットハンズ、理穂さんもキャットハンズです!矢部くんは、パワフルズですよ!」
堀江「何の因果だ…」
監督「とにかく、部室に来い!学長も来てるぞ!」


―――


みずき「聞いたよ!理穂!堀江!おめでとっ!」
理穂「み、みずき〜〜〜!」
みずき「お、おいおい泣くなよ〜〜!」
佳奈美「ほろほろ…」
涼華「佳奈美は泣かなくてもいいでしょうに」
みずき「堀江、おめでと」
聖「先輩…おめでとう!」
堀江「なんだか信じられんが…まぁ、やるべきことはやるだろう、これからも俺は、俺の都合だ」
聖「相変わらず、らしいな」
みずき「結局そうやっていつまでも、誰を選ぶか選ばないつもりなんじゃないでしょうね」


あの時、あの関係をうやむやにした、堀江の台詞。
―――それはお前らの都合だ!俺が誰を好きなのかは、俺の都合だ!―――


理穂「自分勝手な奴なんだから」
聖「そうだな、女たらしで最低だ」
みずき「うあ!!ちょ、ちょっとまっておじいちゃんが来るからちょっと口裏合わせて!!」
理穂「う、うん、わかった!」
聖「了解だ」

(ガチャ!)

学長「聞いたぞ!みずき!堀江!」
みずき「お、おじいちゃん!」
学長「見事だ!堀江、お前は橘家を継ぐにふさわしい!」
みずき「…おじいちゃん、お話があるの」
理穂「え!?ちょ、ちょっとみずき!」
聖「い、言うんですか?」
学長「ん?なんじゃ?」
みずき「実は……」


――――――

学長「なんだと!お前たちはワシをだましておったのか!」
みずき「嘘をついてごめんなさい、でも私はやりたいことがあるの」
学長「みずき…ワシに逆らうというのか。お前のためを思っているのがわからんのか!?」
みずき「わかってるよ。私、おじいちゃんのこと大好きだよ」
学長「みずき…」
みずき「引っ込み思案だった小学生の私を少年野球クラブにいれてくれたでしょ?」
堀江「…引っ込み思案?」
みずき「私、野球のおかげで変われたの。おじいちゃんのおかげでやりたいこと見つけられたの」
堀江(…変わりすぎだろ)
学長「そうか…わかってなかったのはワシの方かもな、知らぬ間にオトナになっていたんじゃな…」

聖名子「おじいさま」
学長「み、聖名子!?…すまなかったな、いままでお前の気持ちも分かってやれなくて」
聖名子「それは違います。おじいさまは私たちのことを思ってくださっています」
学長「…もうよい、お前たちは自分の思う道を行きなさい」
聖名子「ねぇ、おじいさま。今日は会ってもらいたい人がいるんです」

(ガチャ)

神童「はじめまして、神童裕二郎といいます」
学長「なんじゃお前は!?」

堀江「し、神童投手!?」
矢部「め、メジャーリーガーの神童投手でやんすか!?」
松尾「お、おいおいおいおいどうなってんだ!?」

聖名子「この人は私の婚約者の神童選手です」
みずき「は、はー!?お姉ちゃんいつの間に!?」
聖名子「お父様、お母様には了解していただいています。でもおじいさまにも認めてもらいたいのです」
学長「聖名子…」
聖名子「私、決めたんです。この人と二人でタチバナをついでいくと…」
学長「聖名子、お前…だがな、この男にそんな度量あるとは…」
聖名子「おじいさま、裕二郎さんと話してみればわかりますよ」


――――――


学長「…気に入ったぞ!聖名子!お前はすばらしい青年を見つけたものだ!」
聖名子「ね、そうでしょ?」
学長「野球とは素晴らしい人間を育成するスポーツのようだな」
神童「おじいさん、ご理解いただいてありがとうございます」
学長「そうだな…橘財閥も、いずれ野球専門学校を作ろうではないか。手を貸してくれるな?」
神童「もちろんです、喜んで」

みずき「…なんだか、不本意だけど、うまくいった?」
堀江「だな」
みずき「でも、これでお互いプロ野球選手だね、ダーリン♪」
堀江「もういいだろうが、その芝居も」
みずき「…ひどいなぁ、私まだ本気だよ?」
堀江「マジ?」
みずき「うん、いつか神童選手を越える人になるって信じてるもん」
堀江「俺はあんなにできた人になる自信は無い」
みずき「そっかな〜?素質あると思うけど、ね理穂」
理穂「そうね、こんなに人の気持ちをもてあそんでるだもの」
堀江「耳が痛いな…」

聖「…みずき、改めておめでとう」
みずき「ありがと♪ここまでこれたのも、全部聖のおかげよ〜!」
聖「む、そんな風に言われると照れるぞ…それに、私一人のおかげではない」
矢部「おいらたちも!」
原「いたっちゅーねん!」
宇津「ふっ」
大京「右に同じ」
みずき「あはは、ごめんごめん、わかってるってば」
矢部「結局堀江君の一人勝ちでやんす!」
宇津「まったくその通りだな…にくい、にくいよ」
大京「憎すぎる」
聖「…みずきが、いなくなると、さびしくなるな」
みずき「新キャプテンが弱気なこと言ってるの!元気出しなさい!たまには顔出しに来るしさ」
聖「…うん、そうだな。…いや、寂しい。やっぱり寂しいぞ、みずき」
みずき「聖……駄目よ。私や堀江君がいなくなった今、これからはあなたがチームの中心になるんだからね」
聖「でも、でも……」
みずき「でもはなし、それにそんな顔してると、あの人や堀江君ががっかりするよ」
堀江「俺は別に…」
聖「な、何を言うんだ私は、その、だな」
みずき「今更じゃない、ねぇ堀江」
堀江「知らん」
聖「み、みずき。恥ずかしいぞ…!」
みずき「フフ…それだけ元気があれば、安心、かな。聖、胸を張りなさい、あなたならきっとタチバナを今より強いチームにできる!なんたって、私のお墨付きなんだから!」
聖「…そうだな、すまないみずき。私、これからもがんばる」
みずき「そうそう、そして早くプロにいらっしゃい!あなたなら必ず来れるわ。…私たちの戦いもまだ終わってないしね、ねー理穂、堀江」
理穂「そうよ、三人そろって初めてイーブンなんだから」
堀江「だから、決めるのは俺の都合だと言ってるだろうが」
聖「…わかった、さよならみずき。そして、また、いつの日か…会おう。わたしは、それまで、また強くなる。堀江先輩にも…まだ、言っていない言葉も、あるし、な」


―――

その後、大京は大学野球の道を選び、首都東京大学へ。
原はカリスマ弁護士を目指すために、官僚大学へ。
宇津は野球より音楽の道をえらび、音大への道を選んだ。
松尾、石田、武田もまた、野球の道を選び明治大学へ
市川、岩崎はそのまま中堅会社に就職
佳奈美、涼華は仲良く女子大に進学したらしい。
麗菜はタチバナグループへ入るために、東大へ入学。

そして…俺の高校生活が終わった。


みずき「ま、リーグが違うから交流戦か、オールスターか、はたまた日本リーグか」
理穂「どっちにしても、まだまだこのどろどろは終わらないわよ」
聖「待っていろ…堀江、いつか大好きと言ってみせる」


堀江「終わりたい…」



堀江

弾道3
ミートA
パワーB
走力B
肩力B
守備B
エラーB



*総評
タチバナが一番シナリオが面白いかも。
ってか、理穂とかオリジナルやから、ごめん。
最後完全に妄想小説になったけど、ごめん。
結局誰か選ばせてないけど、ごめん。
でも、タチバナは面白いけど。
っていうか、堀江やな奴で、ごめん。
っていうか、遅くなった。


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